君の膵臓をたべたい 当サイト開設一周年に贈る!「住野よる」の純愛青春映画

君の膵臓をたべたい】サイト開設一周年を記念して、新進気鋭の若手作家「住野よる」の純愛青春映画を紹介します!

 

当サイト開設一周年記念に贈る

皆様のおかげで、当サイトは一周年を迎えました!!パチパチパチー👏👏👏

そこで今回は、サイト開設一周年を記念致しまして、感謝の気持ちを込めて、先日劇場アニメも封切られたばかりの『君の膵臓をたべたい(実写版)』をご紹介していきます。

『君の膵臓をたべたい』は、2017年に公開された映画です。住野よるさんの小説が原作で、そのタイトルからも大変話題になった作品です。WEB小説投稿サイト「小説家になろう」から注目を浴びた作品で、言うなれば新時代の作品と言えるかもしれません。そして、私が推している「浜辺美波」が主演ということで、そう言った意味でもオススメの名作です。^_^v

映画は、原作を改変して作られており、本来登場しない「大人になった僕」を小栗旬さんが務め、物語も映画用に演出されています。それでも、映画としての完成度は高く、観る人の心に何かを残す作品である事は間違いありません。

現在、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』も絶賛公開中(9/1〜)です。こちらは、より原作に忠実な構成になっているということで、実写版とは描かれ方が違うそうなので、併せてご覧になってはいかがでしょうか?

今回はネタバレもありますが、それでも感動が色褪せる事はないと思いますので(事実何度見ても泣いてます)、遠慮なく全力でいかせて頂きます!

 

君の膵臓をたべたいを虹見式(実写ver)で採点すると

虹見式・六性図    
①キャラクターの魅力 15
②ストーリー 15
③演技力 14
④主題歌 / BGM 15
⑤キャスティング 14
⑥感動度 25
合 計 98

 

あらま。なんと高得点なのでしょう。私のドラマランキング2位のコード・ブルーと同じ点数になってしまいました(構成点も)。たった二時間で、これほど感動し、涙を流してしまう作品はそうそうありません。何が起こるかわからないから泣いてしまう。何が起こるかわかるから泣いてしまう。初回で泣けてしまう作品はいくつかあります。その中でもこの作品や「神」という冠が付くような名作は、何度見てもないてしまうような感動があります。それほど大きな感動が、自分の中に残っているからだと思います。
あらゆる面で、ほぼ満点と成りました。ミスチルが歌う主題歌の『himawari』もいいんですよね~。この映画の為の書き下ろしで、歌詞にも注目です。


全ての項目でほぼ満点のこの作品は、日本の歴史に残すべき名作です。

 

君の膵臓をたべたい をざっくり言うと

「君の膵臓を食べたい」という意味と、この言葉に込められた思いを描いた、膵臓の病気を患い、残り少ない余命を精一杯明るく生きようとする桜良と、その秘密を知り、彼女にとって唯一無二の存在となる春樹の物語。

 

君の膵臓をたべたい

ストーリー

「肝心な事は目に見えない」

この一節は「さよならをして悲しませるくらいなら、仲良くならなければよかった」と嘆く王子様に狐が説いた言葉です。

大人になった僕(春樹)は、国語の教師をしている。その授業で教えていたのは、『星の王子様』の一節。

教師を続けるか悩み、デスクの中に退職願を忍ばせている春樹に、図書館の建替による蔵書整理を、学校の意向でパワハラ的に押し付けられる。春樹は、この学校の卒業生だった。学生時代に図書委員をしていたこともあり、渋々担当することなった。

おそらく、卒業してから一度も立ち寄らなかった図書館に、深呼吸して入る。そこには、とても可愛らしい思い出の女性の幻が見えるのだった。

春樹は、一万を超える蔵書の整理をほぼ完璧にこなした伝説の図書委員だった。そしてもう1人、迷惑な助手がいた。それが思い出の女性、桜良だった。

 

君の膵臓を食べたい!

「君の膵臓を食べたい!」

君は僕にそう言った。古来から民間医療では、体の悪い部分を食べると、治ると言われていたからだ。
桜良は膵臓を患っていた。春樹はその秘密をたまたま知ってしまい、桜良に付きまとわれていた。きっかけは、病院で、『共病文庫』なる本を拾って、中身を見てしまったこと。そこに書かれていたのは、

「私は膵臓の病気で、もうすぐ死んでしまう」

と言う一節。

「私の秘密を知ってしまったね?」

と、クラス一の人気者、山内桜良は笑顔で言う。

深刻なことのはずなのに、なぜか他人事のように、とても明るく振舞う彼女、冗談なのか?それとも本当の事なのか・・・

春樹は、他人に興味がなく、孤独を貫いていた。

そんな春樹に、桜良は「この本を読んで勉強しなさい。」と、

自前の本『星の王子様』貸し出す。

物語は、教師になった春樹が、図書委員の生徒に思い出を話すように進んでいく。

 

桜良、図書委員になる

自分の秘密を知り、春樹に興味を持った桜良は、図書委員になる。しかし、いい加減な所があり、分類番号通りに整理しない。

「ちゃんと分類番号よく見て!」と注意すると、

「ちょっとくらい間違ってたっていいじゃない。頑張って探して見つけた方が嬉しいでしょ?宝探しみたいで。」

と無邪気に言う。

秘密を知る春樹は、
「残り少ない命を、こんなことに使ってていいの?やりたい事はないの?」
と尋ねると、
「そっちこそ、やりたい事をしなくていいの?もしかしたら明日突然、君が死ぬかもしれないのに。事故とかさ、最近この辺りで通り魔事件もあるし。私も君も、1日の価値は一緒だよ?」

はっ!とさせられる春樹。

「でもどうしてもやりたい事を考えろって言うなら、君に、私の残り少ない人生の、手助けをさせてあげます!」

デートの約束を強引に取り付けられてしまった。

 

桜良とのデート

約束通り待ち合わせ場所で待つ春樹。驚かす桜良。どこに行くの?と尋ねると、「ホルモンを食べます!膵臓は、シビレって言うんだよ♩」とウキウキしながら言うが、春樹にとっては嫌がらせにしか聞こえない。

話題を逸らそうと、これからどうするの?と尋ねると、

「未来って意味?私には持ち合わせがないよ。」
「そう言ってさ、僕が困ると思わないの?」
「どうかな(笑)でも、君以外には言わないよ。クラスメイトの秘密を知ったら、普通動揺するでしょ。でも君は、全然平気でいるじゃない。」
「それは、一番辛いはずの当人が悲しい顔を見せないのに、他の誰かが泣いたりするのって、お門違いだから。」

何気ないような、核心を突くような会話は、2人の絆を深めていく。

デートで向かった先は、スイーツバイキングのお店、スイーツパラダイス(スイパラ)。親友の恭子と来るはずだったのに、先に来てしまった春樹はバツが悪い。

桜良に「親友はいないの?」と聞かれると、

「ほんとは僕になんか興味はないくせに。」

と答えてしまい、桜良を怒らせてしまう。

「僕に親友なんかいるわけないでしょ?」

ふくれっ面の桜良は、「じゃあ友達は?彼女は?」と聞き、

「そんな人いるわけ・・・」

「好きな人くらいいたでしょ?」

「一回だけ・・・何にでも「さん」を付ける人。色んなものに敬意を忘れないって事だと思ったんだよね。」

真面目な顔で聞いていた桜良は、その好きになった理由が素敵だと言う。

春樹が好きになった女の子は、他の人と付き合った。

桜良はその子を、「人を見る目がないですね。」と言った。

それから2人は、スイーツを食べながら、笑顔で色んな会話をした。

夜、今日のデートを『共病文庫』に書いたとメールが来た。これからも仲良くしてね、と。春樹も、これは仲良くしてるんだ、と自覚するのだった。

「死ぬよ」

翌日、スイパラに行ったことがクラス中に広まっていた。桜良はクラス一の人気者。クラス一根暗な春樹と桜良がなぜ2人でスイパラに行ったのか。

桜良は「仲良しだから」と恭子に説明し、春樹に「ね、仲良くん♫」と微笑む。

騒ぎ立てる教室にいられなくなった春樹は屋上に逃げ、桜良は追いかけるのだった。

桜良と仲良くなって、変わってしまった日常。

戸惑う春樹は桜良に「これ以上僕を巻き込まないで下さい。」と言う。

2人の関係は、恋人でもなく、親友でも友達でもない。仲良しの関係。

「親友に病気の事は言わなくていいの?僕なんかといるより、大切な友達と残り少ない時間を過ごすことの方が価値があると思うけど。」

「いいのいいの。恭子は感傷的だから、言ったらきっと、会う度泣いちゃうもん。そんな時間、お互い楽しくないでしょ?彼女の為にも、私の為にも、ギリギリまで隠しておきたいの。」

あまりにさっぱりしていて元気な桜良に、春樹は問いかける。

「君はさ、本当に死ぬの?」

「死ぬよ。」

笑って答える桜良。あと一年持つかどうかと言われている。

「君にしか話さないって決めたんだ。君は、きっとただ1人、私に普通の毎日を与えてくれる人だから。お医者さんは、真実しか与えてくれない。両親も、日常を取り繕うのに必死になってる。恭子もきっと、知ったらそうなると思う。でも君だけはちがう。」

「僕はただ、向き合おうとしてないだけだよ。」

「こらこら、そんな難しい顔するんじゃない!どうせいつか、皆死ぬんだし。ほら、天国で会おうよ。」

晴れ渡った空を見ながらそう言う桜良は、まるで天使のようだった。

2人の関係は、他の誰とも違う。桜良にとって必要な人で、春樹にとってもきっと必要な人なんだろう。

体育の授業に戻る春樹の元にクラスメイトが話しかける。

「よう志賀。お前、山内桜良と付き合ってんの?噂になってるよ。」

クラスメイトに声をかけられたのは初めてだった。

「付き合ってなんかいないよ。間違ったことだから、気にしてない。」

「おっとなぁ~♩・・・ガムいる?」と差し出されるが、

「大丈夫」と断る。

そんな2人のやり取りを、恭子はずっと睨んでいた。

桜良のやりたい事

連休前、桜良が遠出をしたいと言うメールが来た。図書館内ですぐそばにいるのに。

そんな桜良は蔵書整理に飽きていた。

整理の仕方がめんどくさい桜良に春樹は、

「だから、本が迷子になったら可哀想でしょ?」と言うが、

「だからぁ、本だってきっと、宝探しみたいに探してもらった方が嬉しいはずでしょ?」

2人の意見は平行線だった。

春樹の行きたい所の答えは、
「君が死ぬまでに行きたい所。行きたい所の答え。」

「言ったね?」

と悪巧みをするように、超絶可愛く答える桜良だった。

遠出の日、行く先は告げられず、着いて行くしかない春樹。自由奔放な桜良は、行き先を教えない。

「行き先がわからない方が面白いでしょ?」

だんだん桜良の性格がわかってきた(笑)

「今日ね、初めて親に嘘ついてきちゃった。恭子とお泊まり旅行するって。」

ハートを撃ち抜かれた瞬間だった。私が!(笑)

「お泊まり旅行!?」と戸惑う春樹に、

「次の駅で新幹線に乗り換えます。君も覚悟を決めなさい♩」


もうどうにでもしてくださいと思う私なのです・・・(笑)

行き先は、なんと福岡だった。

「わあ、ラーメンの匂いするぅ~♪」とあげぽよな桜良に、

「それは脳の刷り込み。気のせいだよ」と冷静に突っ込む。

「絶対するよ!鼻腐ってんじゃないの?」と冷たく返されると、

「腐ってんのは君の思考回路でしょ!」と言い返すと、

「腐ってるのは膵臓です。」と笑いながら答える。

桜良にとって春樹は、こんなありえないような自虐を言える程の信頼関係なんだなと思わされます。自分の一番知られたくない弱点を晒け出せるということは、どれだけ楽なことなのでしょうか。隠したいものを隠さなくていい関係というのは、実はとても凄いことで貴重なことなんですよね。

ラーメンを食べたり、名所を回る2人は、どう見ても恋人同士だろう。しかしその実は、「仲良し」

神社に言った2人はお参りをする。

真剣に願い事をする春樹の願いを当てる桜良。

「彼女の病気が治りますように。」

桜良は、今更そんな願い事はしない。

「家族や恭子や仲良しくんが、健康でいられますように。」

それが桜良の願いだった。

夜、着いたホテルはめっちゃ豪華なところだった。驚く春樹だったが、死ぬまでに貯金を使いきると言う桜良。

予約の手違いがあり、代わりの部屋を用意されたのだが、

「一緒の部屋なんだけどぉ、いいよね?」

は、はい!いいです!!」と言いたい私(笑)

春樹は冷静に、桜良の嫌がらせだと突っ込むが、桜良はふかふかのベッドに寝転がり、「一緒のベッドで寝られるなんて、ドキドキするね♪」と弄ぶ。

はい、小悪魔桜良の爆誕です。^^;

春樹は当然嫌がるが、完全に桜良のペースだった。

恋人でもないのに・・・と悩む春樹は、生真面目だった。お風呂に入っている小悪魔桜良にポーチを取ってと頼まれ、持って行くときも、目を瞑り渡すのだった。桜良にとっては、そんな所が可愛いのだろう。

お風呂から上がった春樹が見たのは、お酒を飲む桜良だった。それは、死ぬまでにしたい事の1つだった。そう言われると、強くは言えない春樹なのだ。

 

真実か挑戦ゲーム

トランプのカードを出し合い、数が大きい方が、真実か挑戦かを聞く権利を得る。
真実は、質問に答えなければならない。挑戦は、指示された事を実行しなけれなならない。

一回戦、勝ったのは桜良。
「うちのクラスで、誰が一番可愛いと思う?」
僕は人を見た目で判断しないと断るが、桜良は強引に問いただす。
渋々答える春樹は、「数学が得意な子かな。」
「ひなぁ?私じゃないんだぁ。そっかぁ。ああいうのが好きなんだぁ。」
おちょくる可愛い桜良。

二回戦、桜良の連勝。
「ひなが一番として、私は何番目?」
「僕が顔を思い出せる中で、3番。」

こらぁ!春樹ぃ!!一番に決まっとろうがぁ!!と突っ込む私ですが、桜良はその答えに恥ずかしがっていた。

 

あ、でもね・・・今あらためて思い出すと、クラスで3番目に好きな子くらいが、実は自分と一番気が合ってたりした子なんだよなぁ~と、遠い目で空を見上げる私・・・(笑)

ゲームを続け、春樹が勝つ時は、真面目な事しか聞かない。

ゲームも終盤になり勝ったのはまたもや桜良。先に真実と挑戦の内容を言う。
「真実なら、私の可愛い所を3つ挙げたまえ。挑戦なら、私をベッドまで運んで。」

無言で挑戦を選ぶ春樹は手を貸そうとするが、桜良は「運んで!」と言うと、お姫様抱っこでベッドに連れて行くのだった。それは子供の頃からの憧れでもあった。

最後のゲームは、先に真実と挑戦を出題するルール変更をしたが、やはり桜良の勝ち。

「私が、本当は、死ぬのがめちゃくちゃ怖いって言ったら、どうする?」

この旅行で、薬を沢山飲んでいたことを知っている春樹は、「挑戦」を選ぶ。

「ずるい。」と渋る桜良の指令は、

「君もベッドで寝なさい!反論も反抗も認めません!」

従うしかなく、中々寝付けない春樹だった。

翌朝、恭子からの電話で目が醒める桜良。どこにいるの?と聞かれ、「仲良し君と博多にいる。いつかきっと説明する。だから納得できなくても、今は許して欲しいの。」と答える。渋々納得する恭子だったが、お土産を買い、無事に帰ることを条件に許す。春樹に、桜良に何かしたらぶっ殺すと言うメッセージも含めて。

「私が死んだら、恭子と仲良くしてあげて欲しいの。恭子をお願いね。」

恭子は男を見る目がない。強そうに見えて本当は弱い子。1人にするのが心配だから、私が死んだら恭子と仲良くして欲しい。桜良はそう春樹にお願いした。

また旅行しようと約束をする桜良。意外とすんなり「行こう」と受け入れる春樹。桜と過ごした時間が楽しかったと素直に言う。そんな反応も桜良は嬉しく、
「私が死んだら、私の膵臓、君が食べてもいいよ。」
「は?遠慮する。大体僕は病気じゃないし。」
「人に食べてもらうとね、その人の中で魂は生き続けるんだって。」
「あたし、生きたい。大切な人たちの中で。」

きっと、恭子にも親にも言えない本音を、春樹には言えたのでしょう。

春樹しか知らない、桜良の本音。やがて死んでしまう桜良の思いが、心に響きます。

 

恭子の結婚

現在の恭子は、結婚を控えていた。春樹の元に招待状が送られてきており、出席するか悩む春樹だったが、欠席しようにも中々「丸」を付けられない。

返事がない事を気にかける恭子達。桜良は祝福してくれるかなぁと気にする恭子に、旦那は、「そりゃしてくれるでしょう!」と答えるが、「ひょっとすると反対したかも?男を見る目がないって言ってたし(笑)」と、桜良の言葉を思い返すのだった。

桜良の家にて

旅行後、登校すると、春樹の上履きがない。サンダルで教室に行くと、通称「ガム君」が、上履きが捨ててあったと持ってくる。困ってたと言う春樹に、「気をつけろよ。ガムいる?」と差し出すが、またも断る。そんな春樹を、恭子はまた睨んでいた。

放課後、異変に気付く。桜良から借りた本がない。クラス委員長が現れ、困ったら言ってと声をかける。

旅行の事もあり、恭子が桜良のボディーガードをしていたことで、図書館には来なかった。桜良から、「図書館には行かない代わりに、私の家に来ること。」と誘われる。

桜良の家に着くと、
「今日うちの両親いないから。だから呼んだの。」
「君は、私を彼女にする気は無いよね?」

「ないよ。絶対ない。」

「オッケー合格。」

「死ぬまでにしたいこと、最後の1つ。恋人じゃない男の子と、イケないことをすること。」

春樹にハグをする桜良。戸惑う春樹に、「イケないことはこれから。」と挑発する。
真面目に捉える春樹に、「なーんて、冗談だよ!」と離れるが、春樹は桜良を押し倒してしまう。

我に帰った春樹は、「ごめん」と呟き、家を飛び出す。大雨の中、外にいたのはクラス委員長。桜良とどんな関係なのか、春樹に問いただすと、春樹は「委員長が思ってる関係じゃないよ。彼女、しつこい人は嫌いらしいよ。前の彼氏がそうだったって。」委員長はキレて、春樹を殴る。そして、桜良の本を投げつけた。そこに桜良が駆けつけ、「もう二度と、私の周りの人たちに近付かないで。」と、珍しくきつく言い、春樹を家に連れ戻した。桜良の元カレは、クラス委員長だった。

春樹も桜良も謝り、返って来た借りた本を返した。
クラス委員長のこともあり、春樹は、「僕なんかが側にいていいのか」と悩んでいることを伝える。偶然秘密を知って、流されてるだけなんだと。

桜良は、

「違う、偶然じゃない。流されてもいない。私たちは皆、自分で選んでここにきたの。同じクラスだったのも、あの日病院にいたのは偶然じゃない。運命でもない。君がしてきた選択と、私がしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ。」

桜良にしか言えない、心からの言葉だった。

桜良の入院

ある朝、恭子が春樹に

「おい!この疫病神!桜良、盲腸で入院だって。あんたと関わってからおかしかったし、あの健康優良児がどうして!呪いでもかけてんの!?」

と言い寄る。春樹は何も言えず、真相を知っている春樹は、桜良のことを心配し、学校が終わってからお見舞いに行く。

驚く桜良は、恥ずかしそうに布団に潜る。盲腸ではなく、検査入院だった。
授業のノートを写し、説明していると、桜良は、

「君、先生になりなよ。だって教えるのうまいし。」

春樹は、人と関わりたくない自分に教師ができるわけないと言うが、桜良は「私の、人を見る目はあると思うんだけどな。」と言う。事実、春樹はその後、教師になるのだった。

恭子がお見舞いに来る時間だと気付くと、春樹は出て行こうとするが、恭子を託したい桜良は、強引に友達になる練習させる。

「僕と友達になって下さい。」

何度も練習させる桜良だったが、途中で切り上げて帰る春樹。病室の外には、恭子が待っていて、会話を聞いていたのだった。

 

恭子と春樹

後日、春樹がいる屋上に、恭子がやってくる。
「あの子、人一倍傷付きやすいの。中途半端な気持ちで近づくのはやめて。」
「君は本当に彼女が好きなんだね。」
恭子は中学の時、友達がいなかった。そんな中、桜良だけは笑って話しかけてくれた。桜良がいなかったら、恭子は今も一人だった。
「桜良以外友達なんていらない。もしあの子を傷付けたら、絶対に許さない。」
そう春樹に気持ちを伝えるのだった。

ストーカー春樹?

学校では、春樹はストーカー呼ばわりされていた。春樹は気にしないが、桜良は、「君が皆と話さないからだよ。皆君をよく知らないから。」

それでも春樹は、桜良がいなくなったら、元に戻るだけだと言う。桜良が気にすることはないと言うが、それでは死ぬに死ねないと言う桜良。
周りががどう思うか気にもしない春樹に、「私がどう思ってるかは気にならない?」と質問する。
「さぁ、仲良しじゃない?」
「ブー!教えない!答えは共病文庫にでも書いておこっかな♩」
「あたしが死んだら、読んでいいよ。君だけには、読む権利を与えます。」

何とも言えない表情で聞く春樹だったが、桜良と指切りの約束を交わす。

桜良からの電話

ある日の夜、桜良からの電話がなる。

「今から病院抜け出して、旅行に出かけない?」

殺人犯になりたくないから嫌だと答える。

「満開の桜が見たかったのに。桜はね、散ったフリして咲き続けてるんだって。散ったように見せかけて、実はすぐ次の芽をつけて眠ってる。散ってなんかいないの。皆を驚かすために隠れてるだけ。」

まるで桜のような桜良に、異変を感じた春樹は、夜中、病院に忍び込み、桜良の病室に行くが、桜良はいない。桜良を探すと、個室に移っていた。桜良は驚くと共に「うそ・・・」と呟く。入院が伸びたことが、春樹が感じた異変だったのだ。

「一回勝負で、「真実か挑戦」、やってくれない?」
「聞きたいことがあるならストレートに聞けばいいよ。」
「それ、とっても勇気がいることだよ?皆本当は臆病だから、こういう運に委ねるの。」

一回勝負のゲーム。勝ったのは春樹だった。神様は意地悪だ。
真実を選んだ桜良に、
「君にとって僕は・・・。いや、君にとって生きるってどういうこと?」

春樹は途中で言い直してしまう。

「誰かと心を通わせること。」

それが桜良の生きることだった。

「誰かを認める。好きになる。嫌いになる。誰かと一緒にいて、手を繋ぐ。ハグをする。すれ違う。それが「生きる」。自分1人じゃ、生きてるってわからない。好きなのに嫌い。楽しいのに鬱陶しい。そういうまどろっこしさが、人との関わりが、私が生きてるって証明だと思う。」

死を感じ、真剣に生きることと向き合っている桜良だからこその言葉だった。

そっと、春樹の肩に寄り添う桜良。

「だから、こうして君といられてよかった。君がくれる日常が、私にとっての宝物なんだ。」

桜良の春樹への思いが見えてくるようだった。

そして、もう一度旅行に行きたかったと言う桜良。もう行けないかのような言い方に、
「死なないよね?」

「死ぬよ。私も君も。」

「そうじゃなくて!まだ死なないよね?何か隠してるんでしょ?バレバレなんだよ。」

真剣な眼差しの春樹に桜良は、

「私に生きててほしいの?」と聞き、

「とても。」と答える春樹に、嬉しさが溢れ、思わず抱きついてしまう。

「君が私をそこまで必要としてくれるなんて。」

抱きしめ返そうとするが、やめてしまう春樹。

「退院したら、また一緒に旅行しよ。一緒に満開の桜見よう。だから絶対、退院して。」

「うん。」

桜良が、「真実と挑戦」ゲームで何を聞きたかったのか。それは、先生になった今の春樹にもわからない。聞けずに、終わってしまったから。

 

桜良の退院

「明日、退院できるって✌️」
桜良からのメールに、「桜を見に行こう!」と返信すると、クラスメイトのガム君が、「見つかったよ。春が過ぎても見られる桜の名所。」とひょっこり現れる。

驚く春樹に、北海道の名所を教えるのだった。「ガムいる?」と差し出されると、春樹は受け取る。春樹に友達ができた瞬間でもあった。

旅行の当日、スイパラで旅行の計画を立てる春樹。女性しかいないお店の中で、人と関わりたくない春樹が、桜良の為になら一人でいられるのは、大きな変化だ。


桜良からメールがあり、おめかししたから時間がかかったこと。入院中に借りた本を返しに図書館に寄るから、ちょっとだけ遅れることを伝える。

おめかしをする桜良はとても可愛く、耳には桜のピアスを付けていた。

「退院おめでとう。」
「心がこもってないなぁ。もっと私を褒めちぎりなさい。」
「思い浮かばないんだけど。」
「ほら、さっさと!」
「君はクラスで3番目に可愛い。」
「だからぁ、また具合悪くなるよ!」

「君は強い。勇敢だ。生きることを愛し、世界を愛し、人を愛し、自分を愛してる。君は本当に凄い。白状すると、僕は君になりたい。人を認められる人間に、人に認められる人間に、人を愛せる人間に、人に愛される人間に。誰かともっと心を通わせる。生きてるってことを感じられるように。僕は君になれるだろうか?いや、こんな言葉じゃ、百並べても言い足りない。」

と打ち込んだメールは、全て消され、打ち直されたメールは、

「君の膵臓を食べたい」

だった。

桜良はウキウキしながら、春樹の元へと急ぐのだった。

しかし、夕方になっても、桜良はこない。そして、それっきり返信はなかった。何時間経っても。

帰り道の街、街頭ニュースが聞こえる。

「今日2時頃、桐岡市の歩道で、市内に住む高校生・山内桜良さんが包丁のようなもので刺され、死亡しました。」

街頭ディスプレイを見上げる春樹。その顔は、無表情で立ち尽くすしかなかった。まるで、自分だけの時間が止まっているかのように。桜良は、世間を騒がせていた通り魔事件に巻き込まれてしまった。どこの誰かはわからない犯人は、すぐに捕まった。

「甘えていたんだ。残り僅かな余命を、彼女が全うできるものだと、思い込んでたんだ。」

生徒にそう語る先生の春樹。

「馬鹿だった。明日どうなるかなんて、誰もわからない。だから、今この一日を、この瞬間を、大切にしなきゃいけないって、そう彼女に教わったのに。」

お葬式に参列するクラスメイト達。参列者のほとんどは、病気の事を知らず、ただ通り魔の被害に遭ったと思っている。いや、しかし最早どちらでも変わらないのかもしれない。涙を流す親友たちとは対照的に、遺影に写る桜良は最高の笑顔でいた。そこに、春樹の姿はなかった。

教室には、花の置かれた机と、何もない机があった。
春樹は、学校に行くことができず、引きこもっていた。心の整理が着くまで1ヶ月。学校に行こうと制服に着替えると、「ちゃんとお別れをしてきなさい。」と、母親に香典を渡される。

向かった先は、桜良の家だった。

桜良の遺影に手を合わせる春樹に感謝を告げる桜良の母。

「あの、お話があるんです。実は、彼女の病気のこと、知ってました。本当は怖くて、来る勇気がありませんでした。でも、どうしても見せていただきたくて、共病文庫。」

「あなただったのね。」
と、桜良の母は、春樹の存在を知っていた。そして、『共病文庫』を差し出すと

「自分が死んだら、この日記をある人に渡してほしい。たった1人、共病文庫のことを知ってる人がいるからって。その人は臆病だから、葬式には来ないかもしれないけど、きっとこの日記を取りに来る。だから、渡してほしいって。」

共病文庫を手に取り、本を開く春樹。
そこには、桜良の秘密が書かれていた。

ここまでは、言わば「表」のストーリーです。この「表」の出来事全てに「裏」がありました。春樹が送った「君の膵臓を食べたい」というメールは、表の部分です。直前に消してしまった文章こそが、春樹の裏にある本心でした。

表のストーリーだけでも、感動してしまいますが、共病文庫に書かれている、今までの裏にある桜良の思いを知ることで、とてつもない感動があります。

 

共病文庫

4月12日、◯◯君に秘密を知られた。焦った。けど、気にしてないふりをした。そしたら向こうも普通の顔してた。驚き!驚き!驚き!そんな人いる?
実は前から、ちょっと気になってた。ずっと本と向き合ってて、自分と戦ってるみたい。もっと彼のことを知りたい。

ー実は、桜良は既に春樹を気にかけていたのだった。

秘密を知ってるクラスメイト君と、同じ図書委員になった。
気を引く為に、わざと分類を間違えた。

「頑張って見つけてもらった方が、本も嬉しいでしょ?」という言葉は、本心でもあり、ごまかしでもあったのだった。

死ぬまでにやりたいことリストを作ってみた。男の子とお泊まり旅行をしたい。美味しいラーメンを食べたい。

ー同じベッドで寝た夜、中々寝付けない春樹だったが、実は桜良も同じだった。

恋人じゃない男の子と、いけないことをしたい。
とても悪くて、いい日だった。少しだけ泣いた。今日は泣いてばかりだ。

ー春樹と触れ合った事が、嬉しくもあり、怖くもあり、本当は泣いていた。

2週間の検査入院。本当はすごく怖い。怖くて怖くてたまらない。彼の顔を見たら、ホッとして、思わず涙が溢れそうになったから、慌ててごまかして隠れた。でも、入院したからできることも見つけた。実は、とある2人を鉢合わせするようにしている。仲良くなってほしいんだけど、中々難しいみたい。

ー入院が決まり、突然春樹が来た事は、桜良にとっても予期しなかった。平然を装い、ごまかしたが、本当は涙が出るほど嬉しかったのだ。そして、恭子が外で立ち聞きしていたのも、桜良の作戦だった。

物が、食べられない。体がだるい。真夜中、彼が病院に忍び込んでくれた。勇気を出して、真実と挑戦ゲームを挑んだけど、負けちゃった。どうしても彼に聞きたいことがあったのに。彼が帰って1人になって、泣いた。たくさんたくさん泣いた。1日でも長く生きられるように、頑張ろう。

ー辛いところを一切見せない桜良の現実。入院が長引き、不安が大きくなる中、少しの異変を読み取り、会いに来てくれた春樹。聞きたいことは聞けなかったけど、春樹と話して、「死にたくない」「もっと生きたい」と更に強く思うようになった。

今日は動けない。もう何日も食べていない。束の間の外出許可。もう最後ってことみたい。最後に彼と旅行して、桜を見に行く約束をした。いつか、恭子と3人でも行きたかったなぁ。でも、十分幸せ。彼と一緒にいられる。そう思えるだけで幸せ。

ー春樹と桜を見に行けるようになった退院は、快方に向かっていたからではなく、「これが最後」というものだった。おめかしをしなければ、血色も悪く、すぐバレていたのだろう。「死」というものが、現実味を帯びてきた。

よーし!一時退院だ!今日はなんだか元気。今から会いに行くからね!

ー家を出る桜良は、とても元気でウキウキしていた。「行ってきます!」と桜良の母が見送る。「行ってらっしゃい!」という言葉が、とても悲しいものになってしまう。そして、これが最後の桜良の思いだった。

日記を読み終えた春樹に、桜良の母は、涙ながらに言う。

「本当にありがとう。あなたのおかげで、あの子はしっかりと生きる事ができた。」

その言葉を聞いた春樹は、

「お母さん、お門違いなのはわかってるんです。でもごめんなさい。もう泣いていいですか?」

と泣きながら言う。桜良が亡くなってから1ヶ月間、春樹は泣けなかった。やっと、桜良の死を悲しみ、涙するのだった。

共病文庫は「裏」にある思い

実は、物事の「裏」にあるものこそ、真実と言えるものであり、本質が隠されています。表にあるものは、それはそれでいいですが、それだけでは足りません。裏側にこそ、見るべきものがあるのです。

そうなんです。

「大切なものは目(表)には見えない…」

この桜良の「表」に見える行動の「裏」にあった想いを知ってこそ、大きな感動になります。もしかしたら、「愛」というものは、表ではなく、裏にしかないものなのかもしれません。

表に出たもの、つまり、言葉とか文字などの言動は、意外と裏腹だったり、照れがあったり、取り繕えたり、嘘をつくこともできます。しかし、感じたことや思ったことは、隠しようがありません。表に出た裏にある理由や真意こそ、本当の思いや「愛」があり、見るべきものなんだと思います。

特に、クドカンこと宮藤官九郎さんの描く作品は、この裏を描くことが抜群にうまいです。『あまちゃん』『監獄のお姫様』などは、見事にその裏を描いており、観ていると納得しかできないのです。代表作の1つ『木更津キャッツアイ』なんかは、野球のゲームのように、「◯回裏」というように、明確に「裏」と表現しています。そういった表と、その裏にあるものを描くのが抜群で卓越しています。

 

宝探し

「完璧だったのになぁ。」

蔵書の整理をする生徒が呟く。ほとんど完璧な整理だったのに、900番台以降はちゃんと整理されていなかったからだ。桜良が亡くなって、春樹は投げ出してしまったのだ。

そこで落書きされた貸出表を見つける。それは、桜良が書いていたマークだった。

「本が迷子になったら可哀想でしょ?」
という自分の言葉を思い出し、春樹は「宝探し」をする。それは桜良の言葉だ。

「頑張って探して見つけた方が嬉しいでしょ?宝探しみたいで。」

春樹は桜良の死後、整理できなかった番号の本を探す。そこにあったのは、10年間眠っていた、桜良の愛読書『星の王子様』だった。そこには手紙が差し込まれていた。


「恭子へ」と書かれている手紙だった。

 

恭子の結婚式

桜良の親友、恭子の結婚式。春樹は、招待状の返事を出さず、出席しないつもりでいた。しかし、恭子宛の手紙を見つけた春樹は、急いで結婚式場へ向かう。

そこには、恭子の夫になる友人がいた。

「よう志賀。おっせーじゃん。これから、花嫁姿の恭子とご対面。お前も来る?緊張するから付いてきてよ。ガムいる?」

ガム君だった。

恭子は、事あるごとに春樹を睨んでいたが、桜良が密かに想いを寄せていた春樹に、いつも気にかけて優しくしていたガム君こと一晴のことも見ていたのだろう。結果的に、桜良の心配は、見る目のある一晴が解消してくれたのかもしれない。

「新郎様をお呼びします」と現れたのは春樹。驚く恭子の横には、桜良との写真が飾ってあった。耳には、桜良が付けていた、桜のピアス。春樹は、私服で来た事、返事を出さなかったことを謝罪し、桜良からの手紙を渡す。

そこには、桜良の思いが書かれていた。

恭子、これは私の遺書です。突然驚かせちゃってごめんね。

ー驚く恭子。

恭子にはずっと秘密にしていたけど、私はずっと膵臓の病気で、これが彼の手から恭子に届く頃には、もうお墓の中にいると思います。
彼って?彼だよ。恭子がいっつも睨んでる、私の仲良しくん。

ー泣きながら手紙を読み進める。

恭子、まずこれを言わせて。大好き。だから病気のことを黙ってて、本当にごめん。でもこれだけは信じて。大好きだったから言えなかった。
恭子との時間を壊す勇気が、私にはなかったの。恭子と笑ったり、怒ったり、バカなことを言ったり、泣いたりするのが大好きだった。

幸せになってね!素敵な旦那さんと、可愛い赤ちゃんを産んで、誰よりも幸せな家庭を作るんだよ。

「ありがとう、桜良。」

追伸。
彼とも友達になってね。恭子がいっつも睨んでる、私の仲良しくんと。

ー病室でのことが思い出される。

「こんなに、遅くなってごめん。あのぅ、僕と友達になってもらえませんか?」

「はい。」

泣きながら恭子は答え、座り込んでしまう。

「どうしよう。もう、なんでこんな時に!もう。バカ!」

恭子の言うそれは、友達だから言える言葉だった。

 

春樹への手紙

桜良の手紙は、恭子だけでなく、春樹にも書かれていた。

背景、志賀春樹君。
ようやくこれを見つけましたね?遅い遅い!
春樹。春樹って呼んでいい?前からそう呼びたかったんだ。短い間だったけど、そばに居てくれて嬉しかったよ。ありがとう。

病院で真実と挑戦ゲームをやったあの時、何を聞こうとしたか教えてあげる。

それはね、「どうして私の名前を呼んでくれないの?」ってこと。
だって春樹、私の名前を一回も呼んでくれなかったでしょう?最初から君、君、君!
ひどいよぅ。でもね、病院に忍び込んでくれた時、気付いたんだ。いずれ失うってわかってる私を、友達や恋人、君の中の特別な何かにしたくないんだってこと。
でも私、そんな春樹に憧れてた。
誰とも関わらないで、たった1人で生きている、強い春樹に。

私は弱いから、友達や家族を、悲しみに巻き込んじゃう。でもね、春樹はいつだって自分自身だった。

ー読みながら振り返った春樹の目には、手紙を書いている桜良が映り、目が合う。

春樹は本当に凄いよ。だからその勇気、皆にも分けてください。

そして、誰かを好きになって、手を繋いで、ハグをして、鬱陶しくても、まどろっこしくても、たっくさんの人と心を通わせて、私の分まで、うん。生きて。
あたしね、春樹になりたい。春樹の中で生き続けたい。ううん、そんなありふれた言葉じゃダメだよね。

そうだね、君は嫌がるかもしれないけど、私はやっぱり、

「君の膵臓をたべたい…」

桜良がこの手紙を書いていたのは、春樹が待っていた時だった。春樹に会いに行く前に、恭子と春樹への手紙を書き、忍ばせた本を、図書館に隠していた。
桜良を待つ春樹は、桜良を褒める為に、メールに素直な思いを連ねるが、全てを消し、一言、
「君の膵臓をたべたい」
と送った。

果たして、そのメールが桜良の心に届いたかはわかりません。少なくとも、メールの裏にあった春樹の思いは伝わることはありませんでした。しかしその瞬間、2人は同じ気持ちでいた。10年間、抱えてきた言葉にできない思いは、音を立てて崩れ去った。

机に入れていた退職願を破り捨てたこと。恭子と友達になったこと。桜良も自分と同じ気持ちだったのを知ったこと。春樹にとって、桜良がどんな存在だったかということ。後ろ向きに生きてきた春樹が、前を向いて生きて行くきっかけとなります。

「桜良のようになりたい」という思いを思い出したこと。

約10年間止まっていた、春樹の時間が動き出したのだろう。

 

君の膵臓をたべたい の魅力

「君の膵臓を食べたい」という言葉の裏に隠された意味

「君の膵臓をたべたい」というタイトルそのものが意味を持ち、この言葉に込められた思いを描く物語です。
自分の悪い箇所と同じものを食べれば良くなる、と言われていたこと。人は、食べて貰うと相手の中で生き続ける、と言われていること。

桜良が春樹に言った、「君の膵臓をたべたい」という言葉は、2回あります。しかし、その2回は、決定的に違う意味合いがあります。

1度目は、ただ自分の膵臓が良くなるように、と言う意味だけでしょう。

2度目は、その思いもありますが、それよりも、春樹を感じたい。自分の中で春樹が生きてほしい。そして、春樹と生きたい、という思いが込められていたのです。

この言葉の意味を知り、感じる為の物語だと言えるでしょう。

 

表と裏をしっかりと描いている

物語の約4分の3は、春樹と桜良2人の間に起こる「表」の出来事が描かれます。

病院で本を拾ろう所から、2人は出会います。いや、クラスメイトなので既に出会っていますが、2人の世界は繋がります。
桜良が図書委員になり、2人の距離は益々近付きます。桜良に引っ張られ、行った事ないところに行き、した事がない事をする。旅行にも行き、異性と二人の時間を過ごす。今までの日常は、桜良によってかき回され、大きく変わっていく。

友達を作らず一人を好む春樹が、桜良に触れて変化して行くのとは逆に、死に近付いて否応無く変わってしまう桜良が、春樹に触れて変わらずにいられた。

そして、残りの4分の1を、二人の間で起きた出来事の「裏」にあった桜良の想いが、共病文庫に書かれており、最後の想いが手紙に記されていました。そこにこそ、この物語の最も感動する、桜良の心の奥深くに込められた「素直な想い」が描かれており、この作品の醍醐味となっています。

 

見事な伏線・回収と、予期せぬ出来事

不運にも、桜良は通り魔の被害に遭ってしまいました。残り僅かの命ではあったかもしれませんが、春樹と最後の旅行に生き、満開の桜を見るはずだった。もしかしたら、旅行先で倒れてしまったかもしれない。旅行の帰りに通り魔被害に遭ったかもしれない。

そう。人はいつ死ぬかはわからない。けど、人はいつか必ず死ぬ。

それは、初めから桜良が言っていたこと。「死ぬまでにやりたい事はないの?」と言う春樹に、「君だって明日死ぬかもしれないんだよ?最近この辺りで通り魔事件もあるし。」と言い返す桜良の言葉は、無情にもそのまま自分に返ってきてしまった。

健康だろうが病気だろうが、いつ何が起きて死ぬかはわかりません。自分勝手にやりたい事だけやって生きるのも、何か違うような気もします。ただ、本当にやりたい事をやらないと、「生きる」とは言えないのかもしれません。

桜良は、最後の願いを叶えることはできなかった。でも、春樹のおかげで、いくつも願いを叶え、何より春樹と過ごすことができました。

死は誰にも平等に訪れる・・・

だからこそ、その一瞬一瞬を自分と向き合い、大切な人と向き合うことが、とてもとても大事なのだと言うことを、桜良が教えてくれた気がします。

 

浜辺美波と北村匠海、小栗旬のキャスティング

なにより、主役2人の演技がとても素晴らしかった!

現役女子高生の浜辺美波が桜良を演じたこもはとても自然で、他には誰も代わりがいないと思える程、ハマっていました。悲劇の少女でありながら、健気に、明るく可愛い桜良は完璧でした。そして、無愛想で孤独を愛する春樹を演じた北村匠海も、とてもハマっていました。イケメン過ぎず、不器用な感じが見事でした。

原作には登場しない未来の僕を小栗旬が演じましたが、これはもう流石としか言いようがありません。

あとは、ガム君と恭子も、自然で世界に溶け込んでいるように感じました。矢本悠馬が演じるガム君は良いですよね~。イケメンではありませんが、幅広い役を演じられるので、濱田岳のような名バイプレイヤーになっていきそうです。(その後、以前取り上げた『賭ケグルイ』の実写ドラマで、浜辺美波と共演していたことを、この時に知りました(笑))

 

愛とは宝探し?

桜良は、共病文庫に出来事の思いを綴り、死の間際、図書館に遺書でもある手紙を遺しました。手紙や写真という存在は、後から価値が出てくる物だと思います。時間は戻ってくれませんし、思い出は帰ってきてはくれません。桜良の隠していた手紙は、「宝探し」だと桜良は言っていましたが、その手紙に込められていたのは、まさに戻ってくることはない思い出であり、「愛」であると思います。

「肝心な事は目には見えない。」という言葉の通り、肝心なことや愛というものは、目に見える「表」ではなく、その「裏」の中にあるのだと思います。つまり「愛とは宝探し」のようなものかもしれませんね。

きっと、物事の表面だけを見ていたら本当の愛は見つからない。真剣にひた向きに自分の正直な想いと感情に導かれながら、その裏にある真実を「観る」ことによって探さないと、本当の「愛」は見つからない。そして、桜良の秘めたる想いを感じ取り、頑張って手紙を見つけたからこそ、込み上げる嬉しさを実感し、彼女の愛が春樹に伝わったのだと思います。

きっと、私たちの周りにも、気付いていないだけで、沢山の愛がかくれんぼしていると思います。どれだけ「愛」という宝探しをできるかが、人生の醍醐味であり、生きる意味なのかもしれませんね。

 

君の膵臓をたべたい まとめ

冒頭にも述べましたが、この作品は住野よるさん原作の小説です。おそらく別の作品も、今後ドラマ化、映画化していくのではないかと思います。それだけ、住野よるさんに観えている世界は、沢山の人を感動させる景色が広がっていると思います。処女作がこれだけのヒットになってしまうと、プレッシャーになってしまうかもしれませんが、ポストクドカンと言われるような作家さんになるかもしれませんね。

「死」をテーマにした作品は星の数ほどあり、ミスチルの名曲「HERO」の歌詞にも

「駄目な映画を盛り上げる為に 簡単に命が捨てられていく
 違う僕らが見ていたいのは 希望に満ちた光だ」

とあります。確かに、簡単に命が捨てられていく映画は幾らでもありますが、この作品は、山内桜良の生き様、死を通して、希望に満ちた光を表現していると思います。捨てられる命ではなく、最後まで懸命に生き抜いた物語です。だからこそ、ミスチルが主題歌を担当したんだと思います。

「死」は誰にでも訪れるもので、自然の摂理です。「死」は避けては通れないものだし、自分と向き合う、大切な人と向き合う大事な機会です。桜良が死に向かって生きる生き様と、春樹と触れ合い過ごした、短くも儚い輝いた時間を感じて、私自身も、あらためて大切な人と輝く時間を過ごせるように、見つめ直したいと思います。きっと、本来死ぬ事や生きるという事は、こんなにも素晴らしく、美しく、感動を呼ぶものなんだと思います。どんな理由であれ、どんな状態であれ、生きられるのに死ぬなんてもったいないです。どうせいつか死ぬんですから。せっかくなら、宝探しをして死にたいものです。

 



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6件のコメント

一周年おめでとうございます^^
私も”君の膵臓をたべたい”を実写で見ました。
はじめはホントタイトルどこで回収するんだろって思っていたのですが手紙のシーンで泣けました。自分を見つめ直すいい作品だと思いました^^

>そらちさん
コメントありがとうございます!管理人のMAXです。お祝いのコメントも頂き、ありがたいです(^^)
衝撃的なタイトルですが、内容はもっと衝撃的で、涙なしには観られない作品ですよね。手紙では、桜良の隠していた裏の思いが明かされて、本当にたまらないです。まさに、自分を見つめ直したり、自分の周りも見直すいい作品になりますね!膵臓は食べてないですが、私の中でも桜良は生き続けています。何度も観続けていきたいですね。

突然すみません。紹介文を読ませていただき、作品への深い理解と愛情を感じました。私も何十回と観て、その度に号泣していますが本当に素晴らしい作品だと思います。共病文庫を読み終えて「桜良がこの世界にいない」という現実を理解した時に感情が抑えられなくなり、嗚咽するのは映画も小説も屈指の場面ですよね。役者も主題歌もBGMも素晴らしく、人の人生に影響を与えるレベルの作品と思います。私は命の大切さを問う作品が好きです。ドラマだと「僕の生きる道」、「jin~仁~」、アニメだと「ロミオの青い空」などが印象に残っていますね。(私はMAXさんより1年後輩81年生まれです)

ポヨタマさん
管理人のMAXです!
とても嬉しいコメント、ありがとうございます!
この作品は、本当に凄いですよね。こんなドラマチックなことは、あまりないかもしれませんが、きっと見方を変えれば、私たちの周りにもこういった起こり得ると思うんですよね。そういう大切なことを、気付かせて見失わないよう教えてくれる作品なのかなと実感します。
「僕の生きる道」も「jin〜仁〜」も大好きです。「命」を前に、どんな風に向き合うかということこそが大事なんだとつくづく思います。
歳も近いということで、今後ともよろしくお願いします!(^-^)

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