HUNTER×HUNTER特集 第7弾 キメラアント編 中編-② 〜ゴンさん化の真相に迫る〜

HUNTER×HUNTER特集 第7弾 キメラアント編 中編-② 〜ゴンさん化の真相に迫る〜

 

キメラアント編中編-①のおさらい

宮殿に突入し、ついに討伐隊対護衛軍の戦いが始まる。シュートとナックルはユピーと。モラウはプフと。ゴンとキルアはピトーと。そして、ネテロは王との対決の為、移動する。

それぞれの思惑が入り乱れ、状況は複雑化し、様々な変化を巻き起こす。

ユピーを巡るシュート、ナックル、モラウの戦い。ゴンの宿願でもあるピトーとの再会。ネテロ対メルエムという、人類と蟻の頂上決戦。

武の極みで太刀打ちできなかったネテロが出した答えは、「人間の底すらない悪意(しんか)」である、もう一つの人間の極み、「科学」の力だった。

さらに激化して行く戦いも、終わりの時に近づいて行く・・・

前回のコラムはコチラ↓

HUNTER×HUNTER特集 第6弾 キメラアント編・中編ー① 〜ネテロと王の激突〜 さあ、物語はいよいよ佳境に入ってきます! ...

 

キメラアント編 もう一つの戦い

ゴンとピトー

ゴンとピトーが対面したのは、ピトーがコムギを治療している時だった。
ゴンは、カイトをやられた怨みを晴らす為に、狂気と圧倒的な冷たさを持った目に変わる。纏う念の姿は暗く影を孕み、それはまるで闇のオーラでもあるようだった。

カイトを取り戻す為に、勇んで向かった先には、ゴンには予想できない、信じられない光景だった。ピトーの能力によって治療しているコムギの姿がカイトと重なるが、冷静に見ていたキルアだけ、状況を把握し、コムギを守っていることを察する。

「俺を覚えているか? ゴン=フリークスだ!!」

コムギを治す姿が、カイトを改造する姿とダブって見えたゴンは激情的に言うが、対するピトーはゴンを覚えていないどころか、コムギをどう守るかしか考えていなかった。

ピトーは、王の命令を守る為、両の掌を床につけ無抵抗を示すが、ピトーの全ての言動は、かえってゴンを逆撫でし、研ぎ澄まされた刃の向け所がなく苛立っていく。

完全に無抵抗になったピトーは、「待ってもらえるなら何でもする!」と、自らの左腕を折り、「望むなら右腕も、両脚を折っても構わない、どうかコムギを治させてほしい」と懇願する。

我を失ったゴンは、ピトーが自らの腕を降りながらも、納得はできずさらに激情してしまう。

「ずるいぞ!ちくしょう!!なんでそいつばっかり!!」

カイトは壊したのに、なぜコムギは治すのか。ゴンは「ジャジャン拳」を繰り出し、ピトーを殺そうとする。

 

的中したカイトの懸念

カイトが懸念していたように、「仲間思いの奴がいたらどうする?」と言っていた存在が目の前にいた。それどころか、敵であるはずの人間を治しているのだから、理解できるわけないし、認められない。
ゴンの感情は行き場がなくなり、我を失う。ピトーを殺そうとするゴンに、キルアは諭そうとするが、そんなキルアに、ゴンは、

「キルアはいいよね。関係ないから・・・」

と、友達とも仲間とも思えないような冷たい言葉を吐く。それを聞いたキルアの心情は、何とも言い表せないものだろう。信頼しているからこその言葉でもあり、我を失ったゴンは、決して無碍にした訳ではない。それでも、キルアにとっては、聞きたくない言葉だった。精神的にも成長したキルアは、心に去来する思いを押し殺す。キルアの言葉もあり、ゴンは感情がなくなったかのように冷静さを取り戻し、待つことにする。
コムギの治療を終えるまで一時間待つ約束をし、物凄い怒りと闘氣を秘めたまま、ゴンはピトーの目の前に座り込むのだった。

 

ゴンの主人公失格感

この時のゴンの言動が、ゴンが不人気であることを物語っている。
カイトをやられた憎しみがあるのはもちろん、何もできなかった自分を責める思いもあった。しかし、その純粋さ故に、ダークサイドに傾いた感が強く、主人公とは思えない言動をしてしまう。人質とは言え、コムギに対して「約束を守らなければ、そいつを殺す」脅したり、仲間で友達であるはずのキルアにまで、暴言を吐く始末。

冨樫の中では、最初はゴンが純粋な理想の息子のように描こうと思ったそうですが、途中から「あれ、こいつヤバイ奴だ」と思ったそうです(笑)。その後は、必ずしもゴンが主人公じゃなきゃいけないということはなく、与えられた役割を全うしているに過ぎないと考えているんだと思います。なので、格好良くなくても、主人公らしくなくてもいい。ただ、まっすぐで、純粋で、その純粋さ故に脆い、人間力は高いが、良くも悪くも人間臭い、ゴンのありのままを描いたのでしょう。

なぜゴンがこれほど嫌われるようになってしまったかというと、敵にある「正義」をしっかりと描いていることが大きいです。そして、ナレーションによるところも大きいと言えます。

 

ナレーション主導の展開

キメラアント編はナレーションが多く、キャラ主導ではなく、俯瞰して見ているような感覚があり、世界観全体で描かれています。だからこそ、敵の事情がわかってしまうので、ゴンの異常性が際立ってしまうのです。

ゴンの魅力を紐解いていく中で、物語上、ゴンも「ジョーカー」の1人であることは間違いありません。ゴンの「純粋さ」は、大きな魅力でもありますが、純粋であるということは、決していい事だけではありません。

子供が時に残酷なように、その純粋さ故に、トンデモないことをやらかすこともあります。今回は、言うなればダークサイドに入ったとも言えます。カイトが助かる以外に、ゴンがダークサイドから戻ることはないでしょう(ゴンさん化する前なら)。

討伐隊の目的は、護衛軍の分断ではありますが、ゴンの目的は、あくまで「カイトを治し、ピトーを倒すこと」なのです。
今回はその目的を果たす結果、任務の遂行にもなるので問題はないのでしょうが、確実に私情で動いているのは間違いないですね。

元々ゴンは、純粋故の「狂気」を持っています。過去、ゼパイルやビスケ、ゴレイヌもその危険さを危惧していました。まだ何者にも染まってないからいいですが、一歩間違えればサイコパスにもなりかねません。カイトを失ったきっかけで、闇堕ちしかけてしまったんです。この章では、元々殺し屋でサイコパシーなキルアのほうが、よっぽど「人情」のある奴に見えてきます。

ただ、主人公をこのように描いてしまう作者には、毎回驚かされると共に、底知れない天才性を感じてしまいます。ある意味、この描写力が冨樫作品の醍醐味ともいえるでしょう。

 

いい人は要注意!?

地下鉄にサリンを撒いてテロを起こした某宗教にも、高学歴エリートの入信者が多い事が話題になっていました。XジャパンのToshiさんもかつて洗脳騒動がありましたし、多くのスピ系やカルト宗教においても、末端にいる信者の人たちは純粋で優しかったり、何かに貢献したいという気持ち強い人が多いのです。そうなんです、こういう人達は大抵「いい人」なんです。それは決して悪いことではなく、むしろいい事だとは思いますが、「ジョーカー」や「サイコパス」からしたら、格好の的だとも言えます。いい人さ、純粋さに付け込まれるからです。「いい人」とは、「都合のいい人」という訳です。

ゴンの場合は、信念が強いので、闇エネルギーが外に向くことはなかったですが、内側に向いたことで、あのように「ゴンさん化」してしまった訳ですね。

 

ゴンの揺るぎない信念

コムギの治療を待つゴンの元に、分身能力を身につけたプフが来る。ピトーは王の命令でコムギを治すものの、プフにとってコムギは、己が理想の邪魔以外の何者でもない。さらにナックルが来たことで、情報操作しようとしたプフだが、ゴンには通用しない。プフは、「敵の中で一番揺るぎない信念を持つ者」と感じる。そして、ピトーは、ゴンの信念と鋭い洞察眼に、「命懸けになる。こいつの牙は、王の喉元にも届きうる。」と覚悟する。

討伐隊の目的は、王の分断と護衛軍の撃破であることには間違いない。しかし、ゴンだけは、似て非なるものがある。ピトーを倒すという護衛軍の撃破は同じだが、ゴンにとっては、ピトーへの敵討ちが全てだということ。だからこそ、ピトーと相対した今となっては、敵討ちさえできれば、コムギがどうなろうと、仲間がどうなろうと、目には入らないのだろう。

それが、揺るぎない信念を生み出し、王にも届きうる牙だと感じさせた。これは、シュートとモラウを助けるために、作戦を無に帰したナックルとは真逆に描いているように感じさせます。

 

ゴンさん化

ピトーを連れてカイトの元に着いた2人だったが、カイトは既に死んでおり、ただの操り人形に成り果てていた。カイトの魂は、既にここにはなかった・・・

絶望したゴンを前に、コムギに扮したプフの企みによって、(人質として確保されていた)コムギが無事だと知ったピトーは、折れた左腕を自ら「ドクターブライス」で治し、ゴンを殺そうとする。

カイトが死んだのは自分のせい。カイトを殺したのは自分、いや、ピトーだと、ゴンの心は混沌とする中、ピトーの殺意を感じたことで、ゴンは「うそつき」とつぶやき、辺りは異常な空気に包まれる。

「もうこれで、終わってもいい。だから、ありったけを・・・」と、異常なオーラを発し、とうとう「ゴンさん」化する。

なぜゴンさん化してしまったのか

明確な理由は述べられていませんが、念能力の「制約と誓約」によるものだと言われています。
ただ、個人的には「災厄説」を推したいと思います。
災厄」とは、ゴン達が住む世界の外にある、さらに広大な「暗黒大陸」から持ち出されてしまった、危険レベルAランクの存在です。
その中の「人飼いのパプ」があの場にいて、ゴンの願いと引き換えに、ピトーを倒せるレベルの「ゴンさん」と呼ばれるまでに変化したのだと思っています。(ネタバレにもなりますが、ゴンの先祖ドン・フリークスは暗黒大陸にいると思われるので、何かしらの関わりも匂わせている)

まあ、そのあとのシーンは、もうね、凄まじいの一言です。

純粋さが「狂気」に変化した場合の一つの現れだという例だと思いますので、ぜひ機会があれば漫画でもアニメでも、ぜひこのシーンをご覧ください!

圧倒的な強さでピトーを倒した後のゴンは、見るも耐えないシワッシワになってしまいました。回復できない、除念も効かないというのは、「制約と誓約」にしては解せないんですよね。あの状態は、災厄の被害者の症状に似ているんですよ。それもあって、「ゴンさん化災厄説」の方がしっくりきます。

 

ゴンさん化の真相

それより、どのようにして「ゴンさん化」したのかよりも、なぜ「もう念が使えなくなってもいい」とまで思えて「ゴンさん化」してしまったのか、という方が重要なのではないかと思うのです。

これまでのコラムでも語ってきましたが、ゴンの中では確定したゴールが決まっていて、それをもとに動いていて、今回は、ゴールである「カイトは生きてる」ということが、覆されてしまった。
確定していたはずのゴールが違った、信じていたものがひっくり返ってしまったのは、ゴンにとって初めてのことだったのかもしれません。それが、恩人で先輩で仲間であったカイトを自分のせいで死なせてしまったことだったので、ゴンにとってはどうしようもないことだったのでしょう。

治せないと言ったピトーの言葉に絶望してしまったゴンを見ていると、特にそう思います。

 

未来確定型思考の弱点とは?

これまで、ゴンは「未来確定型思考」を持っている、ということを述べてきました。ゴンの中ではゴールや答えが決まっていて、だからこそ安心して寄り道(脱線)もするし、最終的には結果にコミットしてきます。

しかし、カイトの事は、その通りにはなりませんでした。ピトーに治してもらえばなんとかなると思い、だからそこピトーに迫り、揺るがない意志で臨みました。コムギの治療を待ち、カイトの元に向かい、治せないとわかったゴンは絶望します。

なぜか。

ゴンは「未来確定型思考」を持っていますが、今回は自分のことではなく他者(カイト)のことです。自分の世界はどうとでもできますが、他者の事は、どうにもなりません。自分の事を自分がどうにかするならわかりますが、ピトーに何とかしてもらう、という、他者の協力ありきの事なので、どうにかなればよかったですが、どうにもなりませんでした。

未来確定型思考は、とても強力な自己実現法ではありますが、その前提は、すべての出発点を「自分」に置くということです。分かり易く言えば、自分のコントロールできるもの、自身の自由になるものを前提に構築するということです。

つまり、今回のゴンの「未来確定」は、前提が間違っていたのです。いつものように未来を確定し行動していたので、どうにもなりませんでした。(結果的にはカイトは転生して生きてはいたが)

もっと言えば、ゴンは、本当はカイトがどうにもならないことは分かっていたと思うのです。それを、自分が原因でカイトを死なせてしまったことが、持ち前の純粋さや未来確定型思考が逆効果となって現れてしまったのではないでしょうか。本当は分かっているのに、「未来確定型思考」を発動して、何とかなると、どうにかなると思い込んだのです。

ゴンさん化の根本にあったのは、ゴンの「未来確定型思考」が、誤った方向に発動してしまったことがあり、自責の念と、自分を騙していた相手への反動が、「災厄」によって引き起こされた現象、という風に捉えています。

もし、最初にカイトと再会した時に、死んだと認めていたら、きっとここまでのパワーアップはなかったかもしれません。単に仇を討つ、という動機では、ここまでは来られなかったと思います。おそらく、ゴンの行動の源泉は、光であるはずです。希望とも言えます。

だからこそ、カイトが戻らないと知り、ゴンさん化したのは、己に課せた罰なのだと思います。そういう意味では、単純に「災厄」だけによるものではなく、「制約と誓約」も合わさったものなのかもしれません。どちらかだけとは言い切れないし、その必要もありませんからね(笑)

強すぎる「」は、その反動で濃い「」を作るものです。ゴンさん化してしまった要因に、そういうこともあったのでしょう。

 

相反する要素の共存が、ゴンさんを生んだ

さらに踏み込むと、中編-①で述べて来ましたが、ユピーは、冷静と怒りを共存させたことで、飛躍的に成長しました。相反する要素の共存は、とてつもないエネルギーを生み出します。DA PUMPが再ブレイクするほどです。(笑)

ゴンさん化にも、相反する要素を併せ持った事が、ゴンさんを生み出したとも言えます。それは、光と闇とも言えるし、愛と憎しみとも言えます。

 

ダイの大冒険に見る、「メドローア」

少年ジャンプに掲載されていた、ダイの大冒険に出てくる「メドローア(極大消滅呪文)」という魔法があります。炎と氷の魔法を同時に放つ事で、対象を消滅させるほどの威力がある魔法です。
相反する要素の融合を可能にしたこの魔法は、作中最強と言われています。

このような感じで、最強の呪文を生み出すほどのエネルギーが、ゴンの中に生み出され、ゴンさん化したのだと思われます。ゴンさん化という現象は、制約と誓約だけでなく、災厄だけでなく、相反する要素の融合も合わさった、強烈なものなのでしょう。

 

窮鼠猫を噛む

ゴンさん化は「窮鼠猫を噛む」を基にしているとも思います。ピトーは猫系の蟻ですしね。それにゴンは小さくてすばしっこくて、ツンツン頭なのでハリネズミっぽくないですか?(笑)
場所的にも精神的にも、ピトーに追い込まれたことで、ゴンさん化して倒した、と言えるでしょう。

そもそも冨樫が最初からゴンさん化を思い描き、ゴンをこういう髪型にして、ピトーを猫型にしたのかはわかりませんが、もしかしたら、どこかにそういった思惑があったのかもしれませんね。

プフの誤算

ゴンさん化の引き金になったのは、プフの謀略でした。分身能力によって、顔、骨格、声帯fをコムギに変形させ、コムギの声色を使ってピトーに電話をしました。自分は無事だと伝えることで、カイトに会った後、ゴンを殺せるように。

プフはカイトが死んでいることをわかっていたからできたことなのでしょうが、結果的にこの「良かれ」と思って行動したことで、ゴンさん化し、ピトーは殺されます。王が復活した後も、もう会うことはなかったわけです。

 

「良かれ」という行動は落とし穴?

大抵、「良かれ」と思ってやったことと言うのは、意外と良くない結果をもたらします。「情けは人の為ならず」という言葉がありますが、この「良かれ」という思いは厄介なものだと、私は思っています。
というのも、「良かれ」と思ってやったことは、「やんなきゃ良かった」と思うことがほとんどだからです(笑)人がいい私は、何度そう思ったことか(笑)

どうでしょう。振り返ってみて、「良かれ」と思ってやったことで、本当に良かったことはどれだけあったでしょう?

なぜ「良かれ」が「良くない」かと言うと、それは大抵は自分の「本心」に基づいたものでなく、相手にとっても「良くない」ことだからです。本当の意味で、相手の気持ちや必要なものがわかることは、まずありません。
自分の本心ではないのに、しかも相手にとっても不要なものだったりするからです。

つまりは、裏を返せば「自己満足の押し付け」だと言えます。

キメラアント中編-①で述べましたが、ナックルは、任務よりも、責任よりも、己の信念を貫きました。その場では、ユピーに負けましたが、結果的にシュートもモラウも死なずに済みました。

結果論ではありますが、ナックルは相手の都合に合わせた「良かれ」の行動ではなく、己が信念に基づいて行動したことで、大局的には勝利しました。

プフが行動すべきだったのは、玉座の間の隠蔽に集中することだったのでしょう。そうすれば、ゴンは絶望の中、ピトーに殺され、唯一無事のピトーに、討伐隊は無双されていたかもしれません。

たとえ間違っていても、自分の信念に基づいて行動することが、自分にとって最も「良い」結果をもたらすのかもしれませんね。

 

王の復活と覚醒

プフとユピーの「無償の愛」

ネテロの命と引き換えに、「ミニチュアローズ」が爆発した。爆発してすぐ、プフとユピーが、中心地に駆けつけ、四肢をもがれ、息絶え絶えの王を見つけ出す。
王は、かろうじて生きていたのです。武の極みも、科学力を持ってしても、キメラアントの王は生き延びました。(すごい生命力!)

ネテロの命を賭した作戦も、メルエムはかろうじて生き延びた。被爆して瀕死のメルエムを、プフとユピーは、自ら自身を差し出すことで、メルエムは復活する。敬愛する王より、「妖精のミスト」「天使の雫」と称されたことに、プフとユピーは「無償の愛」を感じ、まさに至上の喜びを感じるのだった。

「無償の愛」とは、見返りを求めない与えきりの愛だと言えます。プフとユピーは、まさに身を切り、自らの身によってメルエムに喜ばれたことが、どうしようもない喜びなのだった。

この行為そのものは、確かに王の事だけの為に行った「無償の愛」だと言えるでしょう。それは、2人が護衛軍の「蟻」だから、ということもあるでしょう。
「無償の愛」は、素晴らしい行為だと言えますが、必ずしも「至上の愛」だと思いません。

ある意味プフとユピーの犠牲によって王は復活した為、2人はそれでも喜びしかないのでしょうが、客観的に見て、そう在りたいとは思えません。そう思えないものが、「至上の愛」だとは思えないのです。「無償の愛」と言っても、相手が誰でも良かった訳ではなく、王だったからこそ成り立つものです。

その時点で、「無償の愛」とは言えないし、本当の意味で、「無償の愛」は、存在しないのではないかと思います。
見返りを求めない「無償の愛」であっても、結局は「自分がそうしたいからした」という、自分の為の行為です。無償であるかどうかということは、結果でしか計れないものなのかもしれませんね。

 

メルエムとセル

冨樫先生は鳥山明先生をリスペクトしているそうです。そして、メルエムのモデルは、ドラゴンボールに登場した「セル」だと言われていますよね。

セルは、人造人間17号と18号を吸収することで完全体になりました。そして、圧倒的な強さになり、悟空は降参し、息子の悟飯がセルを倒す。その後セルの自爆と共に、界王様の所に瞬間移動して、悟空は死ぬ。復活したセルは、超完全体となり、今度こそ悟飯に倒される、という物語でした。

メルエムの復活・覚醒に関しては、セル編のオマージュだと考えられます。ネテロの自爆により死にかけたものの、プフとユピーが自らを捧げる献身により、メルエムは復活します。そして、復活前よりも更なる強さと、プフとユピーの能力まで身につけてしまいます。(ただ一つ、王は爆発の衝撃により、一時的な記憶障害も起きていました)

おそらく、あらかじめ護衛軍をメルエムに捧げる前提で進めていたのではないかと思えます。そして、ネテロでも勝てなかったメルエムが更に強くなり復活したのは、最も大きな「絶望」となります。まさに「生物界の頂点に立つ存在」に相応しい姿です。

 

「王の復活」神話の法則的解釈(カミィの解説)

一旦倒したと思っていた敵が、さらにスケールアップして復活する。という描写は、タネを明かしてしまえば、神話の法則第三幕、12のステージでいう「フェーズ11:復活」の場面と言えます。

ここはストーリーの最大の山場、クライマックスです。「影(闇)/悪役」との最後の対決、主人公の最大の成長の見せ場となります。

ここは、「フェーズ8:最大の試練」と同じように、読者のカタルシスを意識したものになります。徹底的に主人公(達)を追い詰め、絶望させ、もう間違い無く死ぬという所までいきながら大逆転し、読者の感情を爆発させる場面ですね。

「復活」での勝利は、勝利が大きい分「代償」も大きく、多くの場合何かを犠牲にして達成されます。それは仲間、信念、宝具、もしくは自らの命であったりします。

ただ、HUNTER×HUNTERにおける「復活での勝利」の描写は、読者の誰もが予想を裏切られる展開となりました。

これによって、MAXとカミィ、そしてほとんどのHUNTER×HUNTERのファンは、ラストの大号泣を余儀なくされるのです・・・

この辺が、天才「冨樫義博」の真骨頂ともいえるところでしょうね!

 

メルエムの帰還

プフとユピーの「無償の愛」によって復活したメルエムは、爆発の影響からか記憶の欠如が見られた。ユピーのエキスを飲んだことで、翼を生やすこともできるようになり、物凄いスピードで飛行し宮殿に戻る。王に我が身を捧げたことで、プフもユピーも小さく縮んでしまい、メルエムの尾につかまり、同行するのだった。

プフは分身を宮殿に忍ばせ、記憶喪失になっているメルエムの記憶が戻る証拠を片付け、宮殿に戻ったメルエムが、コムギを思い出せないように仕向ける。

プフは蟻の王として本来の役割を果たさせるよう仕向け、その為に不安材料を始末する為にメルエムにゲームを持ちかける。

「どちらが先に反乱者を始末できるか」

メルエムは、閃光のような「」を放ち、その異常な念の力は、一瞬でナックル達を戦意喪失させ諦めさせるほど圧倒的なものだった。メルエムは、逃げるナックルとメレオロンの元に一瞬で現れ、2人を気絶させ捕まえる。

残るパームとイカルゴを仕留める為にも、プフは「麟粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)」によって群衆に催眠をかけにいく。

プフを待つ間、記憶が欠如している王は、曖昧な記憶の違和感を埋めるために周りを見渡すと、どけた岩の下から「軍儀」の駒である「帥」の駒を見つける。「帥」の駒は欠けており、それはまるで王の記憶の欠如を表しているようだった。

軍儀」を思い出した王は、対座する「ある存在」にたどりつく。名前と顔は思い出せないまま。ただ、記憶の欠如による違和感は、確実なものとなった。

 

ユピーの最期

討伐隊のメッセンジャーとして、イカルゴがウェルフィンと取引する。ウェルフィンの過去世を覚えていたイカルゴは、「奴らは敵だろ?俺たちの。」と呼びかけ、「ジャイロに会いに行けよ、ザイカハル。」と伝える。それにより、ウェルフィンは、渋々ながらメッセンジャーを引き受けるのだった。

ウェルフィンはユピーに出会い、コムギの事を伝える。そして、過去の記憶があるかと尋ねたが、ユピーに過去の記憶はない。

メルエムに自身を差し出し、小さく縮んでしまったユピーに対し、もしかしたら勝てるのではないか?と感じたウェルフィンは「ミサイルマン」を発動する。

その後、ユピーは血を吐き倒れて死んでいるのを、プフに発見されたのだった。

そして、プフを「淋しい熱帯魚(ウインクブルー)」という透視能力で観察していたパームは、一つの確信をする。

あれだけ強大なオーラを放ち、圧倒的な強さを誇ったユピー。ウェルフィンに「ミサイルマン」を打ち込まれたものの、死因は「薔薇の毒」だった。人類の悪意に毒された強者の末路は、なんともあっけなく虚しい最期なのでした。

 

「守りたい」と「殺したい」は矛盾しない?

ピトーは、王の命令を受けて、コムギを治療し、守ろうとした。しかし、プフは、コムギを抱えるキルアと対面し、コムギを殺そうとした。

2人とも、王にとってコムギが特別であることは承知の事実だった。

『きっと数時間のうちに、王は死ぬ。』その時まで、コムギを隠そうとパームは画策する。王への忠誠と護衛軍の分裂は、必ずしも矛盾しない。それは、蟻でありながら、人間の性質を強く持ったからだと言えるでしょう。

 

ゲームの行方

鱗粉の散布を終えたプフは、メルエムの下に戻る。ユピーが死に、状況が変わったことで、この場から去るように進言すると、「ならば、余の勝ちだな。洗いざらい話してもらうぞ。」との言葉に、ゲームを終わらせるわけにはいかなかった。やましい思いがありながらも白状しないプフの姿に、俄然真相に興味が湧いたメルエムは、再び円を放ち、ウェルフィンの元に行く。

プフの能力も身につけたメルエムは、ウェルフィンの覚悟(殺意)を見抜き、質問に答えるように言うが、プフの

「その者は、答えを秘め、事を知る者。その者に質問することは、勝敗の結果を待たずに、戦利品の中身を知ると同義、それは王の本意ではないはず・・・」

と真実のみで説得し、その常軌を逸した決意、狂気が、王を止めた。

プフの命がけの説得に応じたメルエムだったが、ウェルフィンはメルエムに喰われて死ぬという恐怖を味わい、全身の毛が抜け落ち、一気に老けてしまう。

生と死のギリギリの境界で絞り出した言葉は・・・

「コムギ?」

だった。

その瞬間、メルエムは全てを思い出し、求めていた答えを知るのだった。既に王と一部を共有するプフは、メルエムが抱く「感情」に驚嘆する。

「これほどとは・・・!これほどまでに、彼女を!!」

コムギを思い出したメルエムに、ウェルフィンはコムギの居場所を伝える。

メルエムは礼を言い、その場を立ち去ろうとする。

しかしウェルフィンは「俺の王はジャイロ1人!お前らは敵だ!!」と叫ぶ。

そんなウェルフィンに対し、「会えるといいな、その者と。そして可能なら、人間として生きるがよい。」と告げる。謀反を働き、自身を侮辱したにも関わらず、王は見逃すどころか、ウェルフィンを認めるのだった。

記憶を取り戻したメルエムは、隔離されたコムギに会いに行き、いよいよキメラアント編はクライマックスを迎える。

 

キメラアント編 中編-②のまとめ

キメラアント編でも、最も濃い部分を、①②に分けてをお送りしました。突入に始まり、それぞれの戦い、王対ネテロ、ゴンさん化などなど、見所満載です。そして、どれだけ深みのあるストーリーなのでしょうか。

一部では、「核で倒すとか冷めた」とか、「最後がショボい」とか、酷評する人もいます。

もちろん、人それぞれ、感じ方や期待は違うと思いますが、ストーリーに込められた冨樫の思いを紐解いた時、私には「納得」しかありませんでした。

これはあくまで、私が感じたことや、秘密を解き明かしたと思っているだけで、冨樫の思いがどこにあるかはわかりませんが、勝手に「俺スゲェ!」と思ったりしてます(笑)。私にとっては、私が勝手に発見し、勝手に感じた感動があります。そのようにしてみると、キメラアント編に限りませんが、めちゃくちゃ面白く観られます。作者の思いだけではなく、読み手のこちら次第で、作品というのはさらに面白く観られるのだなぁと実感しました。

さて、次回はいよいよキメラアント編のクライマックスをお送り致します!

 

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