HUNTER×HUNTER特集 第6弾 キメラアント編・中編ー① 〜ネテロと王の激突〜

HUNTER×HUNTER特集 第6弾 キメラアント編・中編ー① 〜ネテロと王の激突〜

 

さあ、物語はいよいよ佳境に入ってきます!

宮殿に突入し、討伐隊と護衛軍の戦いが始まります。そして、ネテロと王がついに戦います。物語を進めながら、所々、隠された魅力や発見をお伝えしていきます!

第5弾 キメラアント編・前編のおさらい

ミテネ連邦のNGLに流れ着いた外来種キメラアントにより、人間が捕食され、未曾有のバイオハザードが起きようとしていた。グリードアイランドをクリアしたゴンとキルアは、カイトの元に行き、キメラアントの調査と討伐に乗り出す。

しかし、護衛軍のピトーにカイトが殺され、ゴンとキルアは撤退を余儀なくされる。そこで、いよいよネテロ会長が直々に討伐に乗り出し、キメラアントを壊滅寸前に追いやるが、予想より早く王が誕生し、状況が変わる。王と護衛軍は東ゴルトー共和国に場所を移し、兵隊蟻達は、残る者と旅立つ者に分かれ、残る者は人類に協力するものもいた。
ピトーに操られていたカイトを救出するも、その状態ではどうすることもできなかった。カイトは生きてる、と信じていたゴンは、カイトの仇を討つべく、討伐隊と共に東ゴルトーに向かうのだった。

キメラアントは、人類を選別することで、蟻の兵隊にすべく、全国民選別を行う。それに向けて、討伐隊は潜入し、計画阻止に動く。そこで、キメラアントと討伐隊がぶつかり、幻影旅団も流星街に流れ着いた蟻と戦う。

蟻の王は、時間潰しの戯れとして、将棋や囲碁の国内チャンピオンを呼び出し、対局するが、あっという間に倒してしまう。もっと手ごたえのある者はいないのかと、そこに現れたのが、より複雑に練り込まれた戦略将棋ともいうべき「軍儀」という競技の世界チャンピオン「コムギ」だった。

コムギは、生まれながらの盲目で、他のことは何一つまともにできないが、こと「軍議」だけは、桁外れの才能を有する天才棋士だった。

王は、コムギには何度指しても勝つことはできず、予想もつかない展開へと動き出すのだった。

そして、いよいよ突入の時が迫る。

前回のコラムはコチラ↓

HUNTER×HUNTER特集 第5弾 キメラアント編・前編 〜不朽の名作編の始まり〜

 

王宮突入のカウントダウン

ノヴとパームの潜入

王がコムギと軍儀を指している間、王がコムギに策を講じるも、命をかけていたコムギに対して、己を恥じた王は、自らの左腕を引きちぎってしまう。王を治療するために、ピトーは警戒用の「円」を解き、「ドクターブライス」によって治療をするが、この千載一遇のチャンスを逃さず、ノヴは「四次元マンション(ハイドアンドシーク)」のゲートを作りに潜入する。

途中、兵隊蟻に遭遇し「窓を開く者(スクリーム)」によって始末する。何とかゲートを設置するも、ピトーの代わりに円を張っていたプフの念を見て、これ以上は行けないと、断念し、退却する。

パームはビゼフ長官の慰み者として潜入し、王を見る為に格納庫を抜け出すが、時を同じくして王の治療が終わり、ピトーの念が復活してしまうのだった。

 

ノヴの白髪化

ピトーの念の凄まじさをまざまざと感じてしまったノブは、その瞬間戦意を喪失してしまう。ノヴが恐れたのは死ではなく、情報を取られること。パームにも、無理はするなと心中で呟く。「俺はもう、そこには行けない・・・」と。

あまりの恐ろしさに、ノヴの髪は真っ白になってしまう。
強力な念能力を持ちつつも、恐怖に心が折れ、実質リタイアとなってしまった。
心が折れる演技は、さすが三木眞一郎さんです。

突入の時

いよいよ突入の時が迫る。暗殺稼業に身を置いていたキルアは、こういう時こそイレギュラーが起こり得ると提言する。知る由もないが、王に自傷行為があり、ピトーが治療する為に円が解かれ、ノヴが潜入できたことも、予想外の出来事だった。
可能な限り様々なシミュレーションをして準備に臨むのだった。

ゲートから突入し、大階段にいたのは、いるはずのないモントゥトゥユピーだった。キルアの幾度となる提言は功を奏し、突然現れた侵入者達に対し、ユピーは体を変形させ、異形をなして立ちはだかる。

その時、天上から無数の光の矢が降りそそぐ!

ゼノの「龍星群(ドラゴンダイブ)」だった。

突入のハラハラ感は異常

突入の合図であるモラウの「腹括れよぉ!!!」という檄と共に、ゲートから突入する。
ナレーションメインで進んでいく様は、緊張感を高め、言葉が少ないことで敢えて心情を表現していてお見事です。

本格化していく戦い

王の分断

ゼノの「ドラゴンダイブ」により空から突入したネテロ。そして、その犠牲になってしまったのがコムギだった。傷つくコムギを優しく労わる王だったが、その表情は読めず、 言いも知れぬオーラを放ち、ピトーですら恐怖を抱く程だった。

我に帰った王は、コムギを治すようピトーに命じ、ネテロが分断しようと試みる前に、王自ら分断を提案し、ゼノの「ドラゴンヘッド」により2人は人気のない場所に移動し、分断に成功する。

その渦中、敵であるはずの王のコムギを労わる一挙手一投足に、2人は見守ることしかできず、そんな2人の間を悠々と通り過ぎる王のあまりの自然さに、2人は死を感じるのだった。ネテロとゼノですら、まるで意にも解さない王なのだ。

ナックルとシュートとユピー

討伐隊の突入を待ち受けたのはユピーだった。相手を請け負ったのはシュート。ドラゴンダイブが降る中、即座に変形して対応するユピーに追い詰められた土壇場で、シュートは新たな技を生み出す。ユピーを引きつけ、ゴン達はそれぞれの任務に向かうことができるのだが、力の差は歴然。片足を負傷したシュートは、新たな技によって、ユピーに食らいつく。

土壇場で奥義が生まれ好戦しつつも、シュートが持ちこたえられたのはものの数分。ナックルはボロボロになったシュートを見過ごせず、メレオロンとの「神の共犯者」を解き、姿を現わすのだった。同時にポットクリンも姿を現し、ユピーは異変に気付く。

ナックルが本来の目的とは違う判断をしたのは、大切なもの重さの違いによって生まれた誤算。ナックルにとっては、任務よりも、世界よりも、友情の方が重かったのだ。シュートを助けるため姿を現し、当初の目的ではなく、大切なものを取ったのだった。

ナックルとモラウとユピー

実は、この3人の戦いは、かなり深いテーマで描かれています。
破壊と構築の同居という、怒りと冷静という相反する思考を併せ持つ事が、どれだけのエネルギーを生み出すか、ということ。
セオリーやこうすべきという一手ではなく、己の信念に従った一手を打つことが、結果的には最高の結果に結びつく、ということ。
第一目的は王の分断であり、それが果たされた今、ユピーは倒すべき存在であるが最優先ではない。元々ナックルは蟻とも理解し合いたかったこともあり、完全に勝負に徹することはできなかったことが、功を奏したと言えるでしょう。

魔獣型のキメラアントであるユピーは、知能は低いものの、圧倒的な体力とオーラを誇る。ただ単純に戦闘力が高い。シュート一人では数分の足止めが精一杯なほど。

「頼むナックル!俺のことをゴミみたいに見やがった!俺の分も・・・」

と命を賭けて戦ったシュートの涙ながらの頼みを聞いたナックルは、仇は打てないまでも、せめて一発返す為に、ナックルは一人で立ち向かう。

怒りにより爆発的な攻撃をするユピーの隙をつき、一発入れようとしたナックルは、冷静さを失わなかったユピーの「滅私」によって、怒りによる爆発的な攻撃をコントロールされた策に嵌まり、死を悟った瞬間の走馬燈や花畑が見える・・・

そこで間一髪、キルアの念能力「鳴神(ナルカミ)」が炸裂し、電撃を受けたユピーの身体が完全に硬直してしまう。

とっさにナックルは8発パンチを入れて逃げる。キルアも八つ当たりして「疾風迅雷」の攻撃を喰らわすが、充電が切れて速攻逃げる。

その後、シュートの所に戻ったナックルだったが、シュートの姿はない。ユピーに怒りをぶつけに戻った所に、プフに逃げられたモラウがいた。

モラウの煙でナックルをサポートし、2人のコンボで対応するが、ユピーは怒りをコントロールし、戦いながら成長していく。そして、敵であるハンターたちの念を駆使しての戦い方に、ユピーは尊敬の念を覚えていた。自分より弱いのに、心は強く、対等に戦えることに。しかし、自分よりも弱い相手にやられることに怒りを燃やす。

魔獣が元になったユピーだったからこそ、思考回路は単純で、王への忠誠が、自分の怒りや攻撃をいかに王の為に使うか、と考える冷静さも持ち合わせたことで、冷静に怒りを爆発させる術を覚える。

「冷静に怒り狂え!」

破壊と構築の同居を体現させた姿は、ケンタウロスのようで、「怒りと冷静さ」という相反する感情を持ち併せることができるようになった。
相反する感情を同居させる為に、蓄積させる場所を新たに生み出したのだ。それによって、戦況は一気にユピーに傾く。

更なる強さを身に付け、今度はモラウが追い込まれる。ユピーは、冷静に怒り狂う事で感情とパワーをコントロールできるようになり、また、敵への敬意と称賛もするのだった。

2人は追い込まれ、いよいよ煙はなくなり、体力の尽きたモラウが狙われる。
ナックルのポットクリンの数字は約370000を数えていた。破産寸前の所まで追い詰めるも、絶体絶命となっていた。

攻撃を受けたモラウを守る為に、ナックルはポットクリンを外す条件を受け入れ、解除してしまう。自分と戦うように言うが、ユピーは、「やなこった」と、王の元へを立ち去るのだった。

ユピーは、この戦いによって、成長し変化した。成長と言えるものかはわからないが、蟻としての成長というより、人間的に成長するのだった。

ポットクリンを解除したことで、もうユピーを倒す術は無くなってしまったが、ナックルは勝負に完敗し、思いを汲んでくれた相手を、もう駆除する標的とは思えなくなっていた。

 

相反する要素を持つ成功例はDA PUMP!?

は?DA PUMP?と思いますよね?これが、わかりやすくて面白い例なんですよ(笑)

1996年にデビューし、当時としては高度なダンスと唄、ラップというオリジナリティーの強いグループで、その後幾度のメンバー脱退や追加を経て、ヴォーカルのISSAを残しほぼ新しいグループになりました。

正直、テレビで見るのは、昔の名曲ばかりですよね。ダンスグループというのも、問題行動があったこともあり、EXILEに持って行かれた感は否めないですが、そんなDA PUMPが最近注目を浴びています。

それは「U.S.A.」という曲にあります。この曲は「ダサ格好いい」と言われていて、真似しやすい独特なダンスと、覚えやすい懐メロっぽい曲で、古参のファンから若者にまで受け入れられています。

DA PUMPのメンバーも、「新曲これ!?」と思ったそうです。でも、やるからにはちゃんとやるのがプロだ、と真剣に取り組んだそうです。蓋を開けたら、ブームになるほどまでになりました。その人気の裏に、ユピーに学ぶ相反する要素があるのです。

「C’mon,Baby,アメリカ♪」

それは「ダサい」と「格好いい」という相反する要素です。イケメンが格好いいことをやっても、ただ格好いいだけです。ダサメンがダサいことをやってもダサいだけです。一流のダンサーが真剣に踊り、歌唱力に定評のあるISSAが歌い上げることで、メンバー達もダサいと思っていた曲が、格好良く見事に化けました。

このように、相反する要素を両立させることが、今回のDA PUMPの成功要素だと言えます。

 

ノヴ禿げる

ナックルが瀕死のモラウに説教されている時、救助に来たノヴが、「王がタクトを振れば、奴らは悪魔にでもなる。」と諭す。その姿は、恐怖に震え、禿げていた。「もうそこへはいけない。」と言っていたノヴの意地だったのでしょう。潜入により白髪になってしまったが、そのノヴの意地と白髪を引き換えに、シュートとモラウは助かったのだった。

イカルゴとウェルフィン

パームを探すイカルゴは、ブロヴーダに狙われる。力の弱いイカルゴは、頭脳戦で対応し、催眠ガスで何とか眠らせるが、人を殺したことがないイカルゴには仕留める勇気がなかった。情けないと自分を責めるイカルゴの前に、狼のキメラアント、ウェルフィンが現れる。

敵を殺すことはできないイカルゴだが、仲間の為に命を捨てる覚悟はある。それこそが、キルアがカッコイイと言った所でもあり、ウェルフィンの攻撃にも、堂々と立ち向かう。
狡猾なウェルフィンの能力は「卵男(ミサイルマン)」で、相手に卵を植え付け、反骨心を糧にする「黒百足」を孵化させ、激痛を与える(激痛により死に至る)、というものだった。

攻撃を受けたイカルゴは、死ぬことに恐怖はない。唯一の武器である、自らの足を変形させた銃で攻撃しようとすると、敵意を感じた黒百足はイカルゴの中で肥大化する。激痛の中、ウェルフィンを撃ち対抗すると、ウェルフィンは早々に降参する。狡猾が故に、打たれ弱いのだった。

能力解除するように言うが、ウェルフィンにも解除方法がわからない。殺されないために何とか嘘をつくが、イカルゴには通用せず、もうどうにでもなれと、洗いざらい話すと、黒百足はどんどん小さくなり消滅した。
偽らず、本音を言う事が、敵意や偽りにより大きくなるクロムカデを解除する方法だった。

面白いもので、疑り深く、猜疑心が強いからこそ、偽らず本音で話すことが、能力の解除方法であり、嘘をつかないことがどんなに楽なのか、ウェルフィンは知るのだった。

人類 VS 蟻 頂上決戦

王 対 ネテロ

討伐作戦の最重要対決である、王とネテロ会長の対決は言わば、蟻代表VS人類代表の対決とも言える。

キルアのじいちゃん、ゼノによる「ドラゴンダイブ」により突入したことで、コムギが瀕死の重傷を負ってしまう。そのことが、王に更なる変化をもたらす。それは、コムギに抱いていた違和感が確信にも変わる。

「コムギが大切な存在だという事」

コムギをいたわる姿を見て、ネテロもゼノも驚きを禁じ得ない。しかし、目的を果たす為に王を連れ出そうと思いきや、王自らが場所を変えると申し出る。こっちのペースのはずが、先に言い出す事で、相手のペースになってしまった。

移動してまず行われたのは「対話」だった。
王はあくまで王として、平和的に解決しようとネテロに語りかける。それは、コムギの存在によって、人類にも様々な能力を持つ存在がおり、ただ家畜として、食用の存在ではなく、一定の人類は生かすべき存在として考えているということだった。

ネテロは王の言葉から、王が蟻と人間の狭間で揺れていると感じていた。しかし、ハンター協会のもっと上の権力から、キメラアントを絶滅させることを命じられていた。
つまり、王がどういう結論を出そうが、ネテロは王を倒す以外選択肢はなかった。

ネテロにとっては、それがコムギの存在によるものだとは露も知らないが、有り余るほどの力を持つ王が、意見を変える前に、そして、ネテロ自身が王に情が移り、味方してしまう前に、「百式観音」を発動し、拳を交える。

しかし、繰り出された「百式観音」の拳も王には通用せず、王は再び腰を据えて対話を続けようとするのだった。ネテロは、王の気を引く為、王でさえ知らない王の名前を掛けて挑発する。

王の計り知れない強さを感じていたネテロは、いつからか勝つことが当然で、負けた相手が頭を垂れ差し伸べる手をすぐに掴めるようになってしまった。武の極みはそんなものではない。自分が求めた部の極みは、

「敗色濃厚いな難敵にこそ、全霊をもって臨むこと。」

単発では通じない為、無限の連打である「九十九の掌」を繰り出す。それでも倒せないことは想定内。人類の武の頂点を極めなお、挑戦者として挑めることに、ネテロは、

「感謝するぜ、これまでの全てに。」

と全身全霊で立ち向かう。

武の極みによって生まれた「百式観音」

武を極め、限界を感じたネテロ(46歳時)が行き着いた修行は、「感謝」だった。「一日一万回感謝の正拳突き」によって、更に武は磨かれ、音を置き去りにする程までになる。
そして、1日に課した一万回を軽々クリアできるようになって、ネテロが行ったのは、数を増やすことでもなく、「祈る」ことだった。

「祈り」とは、安易に「こうなりますように」と思うことではなく、やれる事を全てやり、それ以上できることがない状態になってこそ、意味のあるものだと思います。

何もしていないのに、ただ「祈る」ことは、ただの他力本願であり、本当の「祈り」ではないように思います。

そして、1つのことを圧倒的に突き詰めるということは、人智を超越した力を身につけるのだということ。ネテロの能力は、まさに時間を圧縮させたかのような、物理的にはありえないことを可能にする程でした。
ピトーがネテロを発見した際、能力を発動し、行動に移るまでのわずか0.1秒の間に「そりゃ悪手じゃろ、蟻んこ」とはっきり聞こえたり、百式観音による攻撃のその初動だけは、王の挙動をも超える程でした。

限界を超えた修行と、感謝と祈りによって生まれた能力が、あらゆる初動を凌駕する「百式観音」なのです。

限界を感じてもなお、いや、限界を感じるからこそ、その壁を突破できたのかもしれません。
その突破する鍵になったのが「感謝」だったわけです。もちろん、その力を得るのと引き換えに、膨大な時間と労力を使いました。ストイックという言葉では足りないほど、無欲に、貪欲に、修行を積んだわけです。

その修行があったからこそ、ネテロは、人類最強と言われるほどまでになり、誰よりも自由に生きながら、ハンター協会の会長として、沢山の人に慕われたのです。

何か一点、誰よりも突き抜けるものを作るということが、「ジョーカー」として生きるのことに繋がるのかもしれませんね。

 

過熱する戦いの行方

構える王に対しネテロは攻撃を続け、千の拳を交えながら、王は、コムギとの「軍儀」によって、呼吸を乱す術を身につけていた。ネテロの好まない僅かな合間を縫って、ネテロは王の一撃によって右足を失う。

失血で死ぬぞ注告する王に対し、ネテロは右脚に力を入れ止血する。

「失血で死ぬって?ラッキーパンチで調子に乗るなよ?勝負はこれからだ!」

と、なおも氣は充実している。

「全くもって感服する。氣力がいささかも落ちておらぬとは脅威だ。」

と、王は素直に賞賛するが、

「次は左腕をもらう。」

と宣言する。そこからの攻防は、時間にして1分に満たなかったが、「生涯最後!」という気合いで放った百式は、さらに数千の拳を交え、無数の火花を散らす。そして、宣言通り王の一撃はネテロの左腕を奪った。

「軍儀」をしたことで、コムギのおかげで、挑む楽しさを知り、達人の呼吸を身につけた王にとって、大して効かない攻撃は、恐るるに足らず、無限に近いネテロの攻撃の、一点の揺らぎを射止めたのだった。

 

祈りとは、心の所作

追い詰めた王は再び座し、

「さぁ述べよ、余の名を。」

と迫る。

「蟻の王、腕がなけりゃ祈れねぇとでも?」

「祈りとは、心の所作」

「心が正しく形をなせば思いとなり、思いこそが実を結ぶのだ。」

ネテロが放つ百式観音零の手は、敵背後から現れし観音が、有無を言わさぬ慈愛でもって対象を優しく包み込み、研ぎ澄まされた渾身の全オーラを光弾に変え撃ち放つ、無慈悲の咆哮である。

全オーラを出しきったネテロは、本来の年齢(120歳くらい?)のように、ヨボヨボでシワシワの状態になる。しかし、奥の手である零の手を受けてもなお、王は無傷。王は「まさに個の極致」と称賛するが、「零でさえも」とネテロは絶望する。

ネテロはあくまで個であり、王は全生物を統べるべく存在する。
戦ってなお、王は人類の存在を認め、特区を設けることを約束する。

「もう二度言うことはないぞ、余の名を言え。」

それに対し、ネテロは不敵な笑みを浮かべて言う。

「底すらない人類の業ともいえる悪意、本当の闇をおまえは知らない…」

「俺は、一人じゃねぇ。人間を舐めるなよ、メルエム。」

と告げ、自らの心臓に指を突き刺す。

ネテロの心臓が止まると、「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」という小型核爆弾が起動するようになっており、ネテロは自らの命と引き換えにメルエムを巻き込み、爆死した。
ネテロは、王との戦いに勝とうが負けようが、この戦争に勝つ手段で臨んでいた。戦いに勝つに越したことはなかったのでしょうが、最悪の結末を想定してのものだった。

メルエムとネテロの戦いは、蟻と人間を代表した戦いです。ネテロは人類として武を極めた存在であり、メルエムはそれをものともしないほどの強さを持つ。

メルエムとネテロの2人を見ていると、どちらが善でどちらが悪かわからなくなります。そもそも善悪の基準は、時代や環境、立場によって変わります。
どの立場から見るかによっては、どんないい人でも、悪人かもしれません。逆もまた然りです

 

人類の底知れない悪意(しんか)

万事休したネテロが最後に取った手は、武の極みではなく、人類の科学の極みとも言えるものだった。「ミニチュアローズ」という小型の核爆弾を使い、自らの心臓が止まることで発動するようにしていたネテロは、「人間を舐めるなよ、メルエム」という言葉を残し、起爆スイッチ(心臓)に指を突き刺すのだった。

王は、そのネテロの姿に、初めて「恐怖」を抱く程の「人類の悪意」を感じました。

ネテロが闘いに勝とうが負けようが、人類の勝利は決まっていた、始めから詰んでいた、と思い知らされ、王は爆発に飲み込まれるのだった。

 

人間の闇

人間は、決して美しい、素晴らしいだけではありません。当然それもありますが、同じくらい、もしかしたらそれ以上に闇を抱える生物なのかもしれません。それは、歴史を見てもわかるように、戦争は無くならず、至る所で犯罪は起きています。何万、何十万、何百万人という数の人間を虐殺することもありました。

私たちは人間なので、当然人間贔屓で見てしまいますが、決して忘れてはならないことを、王とネテロの対決は、蟻と人類の戦いを描き、善悪とは何か?というテーマでも描かれています。

過去作の「幽☆遊☆白書」でも、「黒の章」という、人間のあらゆる悪を映した映像があり、当時霊界探偵をしていた仙水は、その映像を見ることで、闇堕ちしました。

人間は素晴らしい所が沢山あります。ただ、一言では言えない闇もあり、それを忘れたり見ないでいることや、どちらしか見ない、ということは、決して望ましくありません。良いところだけを見てファンタジーに浸るのも、闇だけを見て人間に落胆し、闇堕ちするのも、良いことは何一つありません。

闇が大きいからこそ、光るものは目立ち、人を惹きつけるものです。最近は災害も多く、今までにはないようなことが次々と起こっています。だからこそ、当たり前にあることの大切さや、人の温もりを本当に有難く感じます。
そういう大切なことを忘れない為に、災害が起こったりするのかもしれませんね。

HUNTER×HUNTERだけではなく、冨樫作品においては、善悪とは何か、ということをテーマに描くことが多いです。味方側は、ヤンキーだったり、妖怪だったり一見悪者が主人公側だったりします。敵役は見た目は悪者で、当然中身も悪者ですが、その中に煌めく輝きがあるのも事実です。むしろ、敵役の方が、その部分が目立ち、敵役の魅力を際立たせています。その描き方が秀逸なんですよね。

HUNTER×HUNTERは、まさにその描き方が見事で、特にキメラアント編は絶妙です。その魅力については、これから後編にかけてじっくりと述べていきます。

 

キメラアント編・中編-①まとめ

さて、最も濃い中編-①はここで折り返します。思ったよりもボリュームが出てしまい、「長ぇよ!」という声が聞こえてきそうなので、中編は、原作のタイトルをオマージュにして、①と②に分けてお送りします(笑)

宮殿に突入し、討伐隊対護衛軍の戦い、そして蟻と人類の頂点の戦いがありました。その戦いは今までになく激しく且つ複雑に状況が入れ代わります。そこで描かれるものはただの戦いではなく、様々な要素や深みのあるものばかりでした。

中編-①はネテロ対メルエムの戦いが中心となりましたが、中編-②は、いよいよゴン対ピトーを中心にお届けしていきます。この戦いもかなり深いものがあり、ファンの間では、かの有名な「ゴンさん化」についても、当サイトの見解や謎を明かしていきます。

・相反する感情を持ち合わせることが、強烈なエネルギーを生み出す
・闇があるからこそ光はより輝く
・完全な善や完全な悪は存在しない。光の中にも闇はあり、闇の中にも光はある
・人間の持つ光と闇を受け入れることこそ、人間らしい

 

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