祝・連載再開!HUNTER×HUNTER特集 第9弾 会長選挙編ー① 〜ジョーカーゲームとナニカ〜

HUNTER×HUNTER特集 第9弾  会長選挙編ー① 〜ジョーカーゲームとナニカ〜

 

いよいよハンターハンターコラムの最終章を迎えました!

奇しくも、HUNTER×HUNTER特集シリーズ最後のこのタイミングで、なんと、週間少年ジャンプでHUNTER×HUNTERの連載が再開しました!!

わずか5ヶ月という短い休載期間なので、ファンの私達はむしろ心配になってしまうという、あれだけ「冨樫仕事しろー!」と言っておきながら、あまりの短さに「いや、もっと休んでていいですよ…」と逆のことを言ってしまう現象が起きていまい、まんまと冨樫の策にハマっている訳です(笑)まあ、休載は本来はあり得ないことなんですけどね…(笑)

おそらくは単行本一巻分、10週のみの再開なのは、動かぬ事実なのでしょうけど(笑)、そんな再開を祝し、HUNTER×HUNTER最後のシリーズ、「会長選挙編」をお送りしていきます。

キメラアント編などに比べてしまうと、一見地味な感じを受けてしまうのですが、実は「裏読み」をして本編を見ていくと、かなり深い内容がその中に含まれていることがわかります。私なんかは、かえってこの「会長選挙編」の内容だけで、人生の様々な悩みや問題を解決できるようになるくらい、そこに込められているメッセージはスゴイものだという実感があります。

そんな視点で、この会長選挙編をみてもらえると嬉しいです!

 

キメラアント編のおさらい

暗黒大陸から、外来種キメラアントがミテネ連邦に流れ着き、未曾有のバイオハザードが起きようとしていた。G.Iをクリアし、カイトに再開したゴンは、キルアと共にキメラアントの調査と討伐に乗り出す。
兵隊蟻を倒し成長して行くが、護衛軍のピトーによって、カイトは殺される。

逃げたゴンとキルアは、討伐に乗り出したネテロ会長から、試練を与えられる。しかし試練には失敗し、ナックルの能力「ハコワレ」によって、30日間念が使えなくなってしまう。
その間、強制的にパームと付き合うことになったゴンはデートに行き、キルアはゴンを守るために尾行するが、キメラアントに遭遇してしまう。その戦いでイルミの針を抜いたキルアは覚醒した。

蟻の王が生まれ、居場所を東ゴルトーに移したキメラアントは、国民を選別し、世界征服の足がかりにしようとしていた。ネテロを中心とした討伐隊が、その計画を阻止し、蟻の王を倒そうと宮殿に潜入する。

王は暇潰しの為に呼んでいた「軍儀」の世界チャンピオンのコムギと出合い、徐々に変化していく。討伐隊の侵入によって、王と護衛軍は分断され、王はネテロと戦い、部の極みでは敵わぬも、自らの命と引換に「ミニチュアローズ」を使い、底すらない悪意は蟻を絶滅に追いやる。

ゴンは、カイトを守れなかった自責の念と恨みにより、「ゴンさん化」してピトーを倒すものの、その代償はとてつもなく大きかった。

蟻の王メルエムは、自らの運命を悟り、蟻ではなく人として最期の時間をコムギと軍儀を打って過ごす。その時は呆気なく訪れるが、メルエムとコムギの最期の時間は、最も感動が大きくなる瞬間でもあった。

 

会長選挙編

ネテロ亡き後、ハンター協会は、新たな会長を選ぶ選挙が行われる。Dランクと言われる任務を十二支んに託し、ゴンの救済と共に物語が進んでいく。

十二支ん(じゅうにしん)

ネテロ会長が認めた優秀なハンターで、会長不在時の有事に指揮権を任せ、暇な時はネテロの遊び相手にしているハンター協会の幹部たち。ネテロを信頼し、心酔する者達は、与えられた干支に合わせてキャラ変している。ただし、副会長のパリストンとジンを除いて。

子:パリストン=ヒル

ハンター協会副会長。トリプルハンター。顔の周りはいつもキラキラしている。どこか胡散臭く掴み所がない。キラキラしているのは、表現ではなく、彼の無意味な念能力のような気がしている。

丑:ミザイストム=ナナ

クライムハンター(ダブル)。冷静で真面目なタイプ。十二支んの中でも、中心的な人物。牛っぽい風貌。会長選挙では4人までに残るが、彼の活躍は原作の続きで描かれる。

寅:カンザイ

単純バカだが、ヒソカの採点は85点と高得点。ケンカっ早く、度々パリストンにケンカを売るも、口では一切勝てない。虎っぽい風貌。

卯:ピヨン

脱力系女子。会議中でもゲームをしている。会長選挙では司会を務める。パリストンが大嫌い。ヒソカの採点は77点。ウサギっぽい風貌。

辰:ボトバイ=ギガンテ

十二支んで最年長。トリプルハンター。落ち着きがあり、十二支んの中でも一番信頼が厚そう。正月に出てきそうな龍っぽい風貌。

巳:ゲル

色気のあるお姉さん。手が蛇に変化する。性格はキツそう。蛇っぽい風貌。

午:サッチョウ=コバヤカワ

馬面で、十二支んの相談役であり裏方担当。お悩みハンター。

未:ギンタ

十二支んが集まった時、会長の死にワンワン泣いている。恐らく優しいが、パリストンが会長に立候補した際、一番にキレる。羊の皮を被ってるのかな?ヒソカの採点は90点。羊っぽい風貌。

申:サイユウ

猿。ジンにケンカを売れるくらい、強さに自信を待っている。口が悪い。すぐカスって言う。猿っぽい風貌。

酉:クルック

連絡係。ハトを操り、全ハンターに選挙の連絡でハトを飛ばす。口が悪く、3段階で文句を言う。鳥っぽい風貌。

戌:チードル=ヨークシャー

トリプルハンター。まさに優等生で、ある意味「日本人」を象徴したかのようなキャラ。会長への思いが強く、犬だけに忠実。パリストンを危険視しており、なんとか思い通りにさせないようにするが…。犬っぽい風貌だが、キャラが固まりきってない(笑)

亥:ジン=フリークス

ゴンの父。遺跡ハンター(ダブル)。滅多に顔を出さない風来坊。皆から面倒くさがられており、パリストンからは一目置かれている。あまりの自由さ故に、みんなから嫌われている。

 

会長選挙という名のジョーカーゲーム

パリストンという男

ジン曰く
「次どうなるかがわかった上で勝とうと思ってない。最強だろ?」
チードル曰く
「抑制の効かない怪物(けもの)」
ミザイストム曰く
「確実にこいつは、闇側の人間。」

ネテロの指名で副会長に選ばれた。その理由は、「イエスマンじゃつまらんじゃろ。ワシが最も苦手なタイプ」というもの。しかし、ビーンズやミザイストムも、心の中ではそれは失敗だったと思っている。「協専」というハンターを多数に抱える組織を牛耳り、協会内で最も大きな派閥を有する。
会長にも最も近く、チードルを始め、ジン以外の十二支んは、パリストンの好きにさせないようするが、結局はパリストンの良いようにされてしまう。

会長選挙方法を決める会議でも、遅れて来たにも関わらず、しれっと司会を務め、文句は出るが、倍にして返され時間も長引くぞと、まともに相手をしないように普段から振舞っているのも伺える。まさに、卓越した人心把握術を持ち、人をおちょくることができるのも、心のツボを心得ているということもあるでしょう。

この会長選挙は、ネテロやトップクラスのハンターである十二支んでさえ御しきれない、パリストンが仕掛けた「ジョーカーゲーム」なのです。それがどういうものなのかを、じっくりと述べていきます。

 

パリストンによるジョーカーゲーム

このシリーズは、ゴンの救済と共に、ハンター協会会長を決める選挙という、2重構成でストーリーが進んでいきます。

初見は、ジンすげぇなぁ、パリストンやべぇなぁ程度にしか見ていませんてましたが、深読みをしていくと、十二支んはチードルを中心に、見事にパリストンが仕掛けたジョーカーゲームに巻き込まれていく様を表していると思います。

選挙の方法は、ジンのハンター魂による策略により、投票方法が決まりました。チードルを始め、本気で会長になる為に立候補した者や、担ぎ上げられた者たちが、パリストンの仕掛けるジョーカーゲームに巻き込まれて振り回されます。

唯一、その輪を外れていたのがジンでした。ジンもジョーカーの1人なので、パリストンの思惑をある程度わかっている訳です。

チードルは、パリストンの思い通りにさせない為にあれこれ画策するのですが、パリストンのジョーカーゲームを崩すには至りません。そもそもまともに相手にもされていません。

なぜなら、パリストンとチードルでは、観ているところが全く違うのです。パリストンによるジョーカーゲームだと気付いていないチードルの行動や画策も、見れば見るほど滑稽です。これは抽象度を上げてメタ的に見ているからこそわかりますが、意外と渦中にいると気付かないものです。

これこそが、ジョーカーゲームを仕掛ける者と仕掛けられる者を対称的に描いているものなのです。

 

会長選挙という名のジョーカーゲームのポイント

もう少し掘り下げて行きたいと思います。
会長選挙というジョーカーゲームは、パリストンにとっては会長になりたくて立候補したわけではありません。ただ、ネテロ会長が残した最後の遊びだったわけです。
しかし、チードルを始め十二支んは、ジン以外その思惑を全く気付くことはなく、ただ単に真面目に「選挙」をしていました。パリストンも会長になりたくて、その為に色々と画策している、と思い込んでいました(それがパリストンの手でもある)。

パリストンが会長になる為に、どのような手を打ってくるか、チードル達が警戒していたのはそういう所なのですが、パリストンの思惑と手の内は、全く違う所にあります。

ジンも、詳しい所まではわからなくても、本質はわかっています。それは、ジンもタイプの違う「ジョーカー」だからです。

 

ジンのジョーカーゲーム

ジンが仕掛けた「ジョーカーゲーム」と言えば、会長選挙の決め方をどうするか、という所ですね。まぁちょっと色合いは違いますが、周りからすれば、パリストンでさえも全く気付かない策略だったと言えます。
十二支ん全員の手の内を読み、くじ引きになる事と、その内容を予測し、先に手を打っておいたわけですから。それが、

「狙ったように獲物が動けば、ハンター冥利だろ?」

という言葉に尽きます。結局ビーンズも、そのジンの姿に驚嘆し、ジンの指示に従い、ジンの策の元、選挙は進んでいきます。ただ一つジンの思惑通りにいかなかったのは、誰が誰に投票したかを見ることができなくなったことだろうか(笑)

周りは、ジンを小馬鹿にしているが、これこそが、ジンが嫌われながらも、一目置かれ、愛され親しまれる所以なのかもしれません。

パリストンの狙い

話をパリストンに戻します。
チードルは、選挙を進めながら、勝つ為の判断やパリストンの不利になるような策を考え手を打ちます。

自らが会長になるのではなく、レオリオを担ぎ上げ、自分とミザイストム、そして浮動票をレオリオに集めれば、勝てると踏んだわけです。

しかし、それすらパリストンの掌の上だったわけで、レオリオが会長になる気がなく、医者を目指しているのも知っていたので、最早選挙の焦点にもなった「ゴン」さえ復活すれば、結果、選挙に勝てると踏んでいたのです。

言わば、チードルの打った手は、会長になる為の策ではなく、パリストンを妨害する策でした。もしかしたら、真剣に選挙に勝つ為に真摯に向き合えば、或いは勝てたかもしれません(それでもおそらく負けていたでしょうが)。パリストンは、ただ「その時」が来るまで、時間を伸ばしていただけで、その目的には誰も気付きません。

その結果、ゴンが復活して劇的に登場し、やっとパリストンの思惑に気付いたチードルは、完敗を認め、恥を忍んでパリストンに聞きます。

「一体いつからこうなることを予測して動いてたの?」

「いやいや、そんな能力僕にはありませんよ。」

はぐらかすパリストンだが、完敗を認め、真剣に聞くチードルに、パリストンは答える。

「ジンさんが、立候補するって言った時ですよ。その後、挑発したら、「ゴンは死なない」って言ったでしょ?その時、頭に浮かんだんです。この場面が。

壇上に立ったのは僕とジンさんで、勝ったのはジンさんでしたけどね。ゴン君が死なないとジンさんが断言した以上、治す手段があるんだと確信しました。そして、彼を選挙に利用されたら、僕は決して勝てないと思いました。

わかりますかぁ?あの時既に完敗してるんです。でも、ジンさんが選挙を降りて、レオリオが登場して、仲間がゴン君を助けようとしているのを聞いて、ようやくこの絵は完成しました。勝利を確信したのは、さっきです。異様な気配がした時に、仲間が助けたのだと確信しました。あとは、ゴン君が来るまで引き延ばすだけ。」

これが、パリストンの描いていたジョーカーゲームだったのです。

見たこともない誰かを信用したことが信じられない、と言うチードルに、

「僕はジンさんを敵として信頼してます。そのジンさんが息子を託すに十分だと言った仲間ですよ? 信じるに決まってるじゃないですか!」

珍しく真剣な表情で話すパリストンの行動原理の裏には、ジンへの信頼があったのだった。

まさに、パリストンとジンが相対する「ジョーカー」であり、ジョーカー同士だからこそ成り立ったジョーカーゲームだった訳ですね。

 

信頼するのは味方だけではない

パリストンはジンを敵として信頼していると言いましたが、信頼とは、味方に対してだけではなく、敵であろうが、認めている相手であれば成り立つものなのですね。
現状ではパリストンが認めていた存在は、ジンとネテロだけでしょう。この2人は、間違いなく「ジョーカー」なので、「ジョーカー」が惹かれるは、敵だろうが味方だろうが「ジョーカー」ということです。

敵であっても素直に認められることが、パリストンの強さでもあり、チードルやミザイストムとは一線を画す所ですね。それが、「ジョーカー」たる所以だと言えます。

 

パリストンの本音

ゴンの投票がパリストンになるその瞬間まで、チードルは微々たる可能性を信じていましたが、結局、選挙の結果はパリストンの筋書き通りとなりました。チードルは、最後まで表面的な部分に捉われていて、本質が見えておらず、パリストンからしたら的外れな行動でした。パリストンを負かすのは、「ジョーカー」でなければダメだった訳です。

そして、会長になったパリストンは、副会長にチードルを指名し、自らは会長を辞任したのです。ふざけたパリストンに怒り心頭のチードルは問いただす。

「僕はね、会長になりたくて副会長を引き受けたんじゃない。会長の邪魔がしたかっただけ。ネテロさんはね、僕が面白いチャチャを入れると、本当に嬉しそうに困ってた。もっと会長と遊びたかったなぁ・・・」

パリストンは、初めて悲しげな表情を見せ、目に涙を浮かべていた。

これこそが、パリストンの本音であり、この「ジョーカーゲーム」の本質だったと言えます。

経過はわからなくても、ここの部分を誰よりも理解していたのがジンだけだったわけです。

私たちの居るこの世界も、このように様々な物事の背景には「ジョーカーゲーム」のような思惑が入り乱れています。

単に真正面に向き合うだけでは、足元をすくわれたり、いいように使われておしまい、ということもあります。これは国同士の戦争や、実際に行われている政治の選挙だって同じです。

単純に、勝った負けたではなく、その裏にある意図と本質をどれだけ見抜けるかどうかが、「ジョーカーゲーム」に巻き込まれない手段なのかもしれません。

 

HUNTER×HUNTERに見る「ジョーカー」とは?

パリストンのジョーカー性

ジンが言うように、パリストンは勝てる力を持ちながら、勝とうとも負けようとも思っていない、「最強の存在」とも言えます。キメラアント編でメルエムが言っていた「達人の呼吸を乱すのは、欲望と恐怖」という言葉がありますが、パリストンは、勝ちたいと言う「欲望」がなく、負けたらどうしようと言う「恐怖」がないのです。強いて言うなら、パリストンの欲望は「自分が楽しみたい」というもので、「恐怖」は・・・うーん何でしょう(笑)。普通は、「死」だったり「負け」だったりしますが、パリストンには現状「恐怖」と思えるものは見当たりません。パリストンは、負けることも、死ぬことも、執着がありません。だから「恐怖」にはならないのです。

漫画の原作で続く物語では、パリストンにジンが対抗し、ハンター世界の2大ジョーカーがぶつかります。もしかしたら、そこで初めてパリストンが恐怖する姿が見られるかもしれませんね。

 

ジンとパリストンに共通するジョーカー像

パリストンとジンは、タイプは違いますが、どちらも「ジョーカー」です。2人とも、十二支んの中では、キャラ変せず、常に己がままでいます。他の十二支んは、ネテロに心酔し、自分の姿を変えてでもネテロに好かれようとしています。実際原作では、会長選挙後に、2人共「十二支ん」を脱退しています。

誰に従うのではなく、己に従う

十二支んのメンバーを見てもわかりますが、ジンとパリストン(ジンパリ)以外は、ネテロに心酔し与えられたコードネームに寄せてキャラ変し、言うなればネテロに「気に入られよう」としていたのです。つまり、「ネテロ」という自分以外の存在に従う生き方をしている訳です。ジンパリ以外は、ネテロの死を悼み、悲しみの淵に立つものもいました。ジンパリは、キャラ変することなく、ネテロに気に入られようともしていませんでした。今から考えると、なぜジンパリ以外をネテロが気に入っていたのかわかりませんが、あくまでハンター協会を運営するために必要な人材だったのでしょう。そして、ジンパリの二人は、単純に老獪なネテロの遊び相手だったのかもしれません。

ジンはビーンズに「あなたが会長を継いでくれたらいいのに。」と言われましたが、当のジン本人は、チードルに「ネテロの意志を継いでいるのは、パリストンだけだぜ。」と言っています。つまり、キャラ変せず、ネテロに寄せなかったジンパリの二人こそが、本当の意味でネテロの意志を継いでいた訳です。まぁ、そういうもんだったりしますよね。

少年ジャンプに掲載されていた「BLEACH」という作品の愛染というキャラの名セリフがあるのですが、

「憧れは、理解から最も遠い感情だよ。」

と述べています。まさに、ジンパリ以外の十二支んはネテロに憧れているが故に、その生き様や本質を理解はしていなかった(できなかった)のでしょう。

これは、決して物語の中だけの話ではなく、非常に重要なセリフでもあると思います。例えば、カリスマ性のある誰かに心酔し、自分にしか見えない一部を勝手に信じ込んで尊敬し、憧れることで、全てを信じ鵜呑みにしてしまうことがあります。そういう人は、簡単に人に騙され、いいように扱われてしまう所があると言えます。まぁ、チョロいってヤツですね。ただ、こういう人、こういう部分がある人は、気をつけないと、世の中の詐欺ビジネスや、インチキ占い師や、似非スピリチュアルや、カルト宗教などに、簡単に転がされて人生を破滅してしまうかもしれません。「オレはオレオレ詐欺には絶対に引っ掛からん!!」と言ってる人ほど引っ掛かってしまうように。

自分に悪意がなくても、悪意を持つ他人の存在はいます。悪意と言うほどのものではなくても、人は欲がある生物です。何を優先するかで、善意にも悪意にもなります。自分が何を優先するかは自分次第ですが、他人に当てはめることはできません。特にパリストンの「ジョーカーゲーム」をよく観察することで、そう言った危険性を少なからず察知できるのではないかと思います。

 

多数に嫌われ、少数に心酔される

ジンパリの2人共、多数の人に嫌われています(笑)しかし、少数でも、2人を信頼し心酔する者もいます。
嫌われると言っても、殺してまで憎む者はほとんどいません。気にくわない、ムカつく、許せない、程度のものでしょう。それがどれだけいても、大した問題ではありません。少数の信頼する者は、命をかけてもいい、と思う程の者だからです。

ジョーカーは、一見理解されず、嫌われやすいですが、一定の人にはそれ以上に好かれ、信頼されるほど、魅力を持っています。それはカリスマ性でもあり、偏ったものかもしれませんが、逆に言えば、万人に好かれようとか、嫌われないようにするのは、ジョーカーではありません。ジンやパリストンが、『誰かに好かれよう』なんてしているのは、想像できませんよね。

まさにこの感覚こそ、「ジョーカー」です。自分に芯を置き、誰の為でもなく、本当の意味で自分の為に生きることができ、人の目を気にする必要がないほど、自分が見ているものに熱中しているのです。そこで起こる向かい風はあっても、歩みを止める理由にはなりません。むしろ少数でも、たった一人でも、真剣に自分を信頼し、応援する力は、何よりものエネルギーになります。どうでもいい人達の適当な応援よりも、たった一人の命懸けの応援は何万倍にもなります。そのたった一人は、自分の心の内にある純然たるエネルギーに反応するはずです。完全なる自分軸を持ち、その元に行動していけば、必ずたった一人に伝わり、大きなエネルギーのうねりとなっていくことでしょう。

 

パリストンが会長になろうとした理由

会長選挙はあくまでパリストンによる「ジョーカーゲーム」だと述べて来ました。選挙は、勝つ為にやっているのではありません。しかし、負けようとも思っていません。その目的は「選挙で遊ぶ」というものだったわけです。

しかし、「負けて楽しい」なんてことがあるでしょうか?よくスポーツなどで、「勝敗を気にせず楽しもう!」って言いますが、やっぱり「勝って終わるから面白い」ものじゃないですか?最終的に勝てば、丸く収まったりします。その為に、途中敢えて負けたりしてもいい訳ですが、なんだかんだパリストンだって、負けず嫌いだと思うんですよ。ただ、勝ち方やこだわりが、ノーマルとは違うだけで。そこが「ジョーカー性」なんですよね。

なので結果、選挙に勝ち、即辞退した訳です。真面目に選挙に取り組むチードルからしたら、それは許せるものではないですよね。そこは流石のジンでさえ見抜けなかった訳ですから。

 

ゴンの救出

キメラアント編で、護衛軍のピトーを倒す為に「ゴンさん」化して、とてつもない代償を背負ったゴン。

会長選挙編と同時並行で、選挙を終わらせる決め手にもなったゴンの救出劇。このゴンの救出を巡り、キルアとゾルディック家を中心に大きな波乱が巻き起こります。その中でも、特に必目すべき所をお伝えしていきます。

 

ゴン救出に動くキルア

イルミの洗脳針よって、その記憶を封印され行動を制限されていたキルアは、針を抜いたことで覚醒し、実の弟(妹?)であるアルカを思い出す。

ゴンを助けるために、ゾルディック家に幽閉されているアルカに会いに帰省するキルア。

アルカと再開したキルアは、ゴンを救出する為に、アルカをゴンの元に連れていくのだが、それを阻止するのが兄のイルミ。ヒソカの協力を得て、徹底的に邪魔をし、アルカ抹殺に動くのだった。そのインナーミッション(家族内司令)は、会長選挙までも巻き込んでいく。

家族とは言え、アルカ抹殺に動いていたのには、アルカの能力にあった。

それは、ゾルディック家と会長選挙をも巻き込んでいく。

ゾルディック家の相関図

アルカとナニカ

アルカはゾルディック家の4男。男のはずだがキルアは女の子だと言う(これについては後に述べます)。アルカは幽閉されているが、それには理由がある。アルカは「ナニカ」と言う不気味な存在を宿していた。「ナニカ」は、おねだりを3つ聞いてもらう代わりに、何でもお願いを一つ叶えるという能力がある。一見良さそうな能力ですが、最大の問題は、ナニカのおねだりに答えられなかった場合、自分を含め、親しい人が道ずれに死んでしまうということです。

その危険性から、アルカがゾルディック家の家族であり、「利用価値」があったからこそ幽閉していましたが、ナニカの能力でゴンを救出することで、おそらくキルアは死に、近親者も多数が死ぬと予想されたので、イルミはアルカ抹殺を狙っていた訳ですね。

原作(単行本)に、「ナニカ」は暗黒大陸から来た「災厄」であることが明記されています。その正体は「欲望の共依存 ガス生命体アイ」です。ただ、どのような経緯でアルカの中にナニカが棲みついたのかはわかりません。しかし、その能力というか特徴故に幽閉され、キルアはイルミの針により矯正されていたのです。

 

キルアとナニカの関係考察

これは私の考察です。

アルカは男なのか女なのか、名言はされておらず議論は尽きません。そこで、私の考察を述べていくと、

「アルカはキルアのおねがいによって、女の子になった」

というものです。異論反論がある方はコメントして下さい(笑)

理由はと言うと、

・「アルカは4男」

・執事のツボネは「坊っちゃま」と呼んでいる

・家族写真が女の子っぽくない

・5男のカルトが「兄を取り戻す」と言って幻影旅団に入った

ということが挙げられます。カルトが言う「兄」がアルカのことなのかはわかりませんが、キルアのみがアルカを女の子と認識しています。

おそらく、アルカは元々男で、5人兄弟全員男だったが、幼い頃のキルアは妹が欲しかった。そこで、「欲望の共依存 ガス生命体アイ」が現れ、キルアのお願いを叶えたのではないか、と考えます。つまり、アルカを女の子にしたのは、キルアだと言うことです。そして、アルカにアイが取り憑いたのではなく、実はキルアに取り憑いたのではないか。アルカを女の子にするおねがいをしたことで、アイがアルカの中に「ナニカ」として棲みついたのではないか。

というのも、キルアは「ナニカ」の法則を無視することができます。本来、おねだりを3つ応えておねがいを叶えてもらえるものですが、キルアは唯一、ナニカに「命令」することができ、それは「ナニカ」の法則には沿わない。それは元々ガス生命体アイがキルアに取り憑いたからではないかと思うのです。

アイは「欲望の共依存」です。キルアの「妹が欲しい」という欲望を元に、キルアとアルカの共依存が成り立っているのではないか、という考察です。

 

キルアとアルカとナニカ

キルアはアルカを守る為に、ゴンを治した後、ナニカにもう出てくるなと命令します。涙を流し、とても寂しそうにアルカの中で眠るのですが、アルカはナニカを泣かしたキルアを叱ります。ナニカは、キルアに褒められたいだけなのです。そして、キルアは、アルカもナニカも守ると覚悟し、ナニカに謝ります。

すると、ナニカは「あい」と言う返事ではなく、「はい」と答えます。

「欲望の共依存 ガス生命体アイ」故に、返事はいつも「あい」と答えていたナニカは「はい」と返事をするようになった。結果的に、キルアは五大災厄の一つを攻略したと言えるのではないでしょうか?

 

ナニカは人の欲望を映す鏡

「どんな願い事も叶える」というナニカの能力は驚異的なものですが、ナニカ自身は、意図的に何をしようというものではありません。結局は、おねがいをする人の欲望が鍵です。ナニカの能力を利用する人次第で、ナニカの能力は悪にも善にもなります。その欲望の大きさに応じて、おねだりの要求も大きくなります。そのリスクは欲望が大きいほど大きくなります。しかし、健全なお願いだったり、人を治すおねがいに対してのおねだりは、可愛いものです。

使い方によっては、関わる人をすべて壊滅させるほどのエネルギーを持つナニカは、本来は善でも悪でもない、巨大なエネルギーの塊なように感じます。何もしなければ全くの無害ではありますが、それでは存在する意味もありません。キルアはゴンを元通りに戻すために、どうしてもナニカの力が必要になりました。そのおかげで、アルカは自由になるチャンスを手に入れました。そうなると、誰かがナニカをコントロールしなければなりません。

なので、もしイルミがナニカを管理したら、大変なことになるでしょう。だからキルアは、アルカを守り、ナニカを守るという目的を見つけ、ゴンと袂を分かちます。

自由を手に入れるということは、実はリスクがあります。しかし、そのリスクを受け入れ、覚悟を決めることは、無限のエネルギーを手に入れるようなものなのかもしれません。そして、逆説的ではありますが、ある意味「無欲」であればこそ、それを手に入れられるのかもしれませんね。

 

ナニカは年金制度の批判?

ナニカは、おねがい一つ叶える代わりに、おねがいの大きさに相当する「おねだり」を3つ要求する。そして、おねだりを聞くのは、おねがいを叶えてもらったのとは別の人というものです。
もちろん、おねだり3つに応えれば、おねがいを叶えてくれますが、おねがいの大きさに応じて、おねだりの要求も大きくなります。

例えば、「億万長者にして」というおねがいに対してのおねだりは、「肝臓ちょーだい!」とか、「十二指腸ちょーだい!」など、死に至るようなおねだりでした。おねだりを4回断ると、本人自身とその人と長く時間を過ごした人とが同時に捻り潰されて死にます。それも、おねだりの大きさに応じて、被害が大きくなります。このおねがいの代償は、67人の命でした。

このように、誰かのおねがいの代償を、他人が背負うおねだりという構図は、「年金」のシステムに通じるものを感じます。

そして、おねだりに応えられないと、みんな共倒れという(笑)

そのような、不完全で不公平な年金制度を、普通とは違う尺度で示しているのかもしれませんね。

 

会長選挙編まとめ

ネテロの後任を決める会長選挙は、パリストンによる「ジョーカーゲーム」でした。

実は、この会長選挙編こそが、私が特に取り上げたかったコラムだったんです。

物語としてはキメラアント編が、メッセージ性としては会長選挙編が引き込まれます。そして、会長選挙編こそ、重要なテーマが隠れていると感じていました。シリーズラストだったので、ここまで辿り着けて、感無量です!

会長選挙を通して、「ジョーカーゲーム」がどういうものなのか。「ジョーカー」とはどういう存在なのか。パリストンとジンという2大ジョーカーによって、描かれました。何とも深みのあり、実際の世界でも隠されているような、一種のパンドラの箱のような、「世界の秘密」「支配の構造」というものが映し出されていたのではないかと思います。

ここまでジョーカーを描けるのは、冨樫が「リアルジョーカー」だからでしょう。まだまだ研究の余地は、存分にあるのではないかと思っています。

そして、ゴンの救出に向けて、「ナニカ」という存在が登場しました。これもまた、よく創られた存在だなと思います。独自の視点で考察しましたが、最初からアルカの不気味な存在を匂わせていたものの、このように着地させて伏線を回収するところは、まさに圧巻です。卓越したストーリー巧者としか言えません。

そして、物語はいよいよ最終回を迎えると共に、このシリーズもラストとなります。次回も、最後を締めくくるに相応しい内容になると思いますので、ぜひ楽しみお待ちください!

 



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