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下町ロケット 面白さの秘密は、「ジョーカーゲーム」にあった!?
「下町ロケット」は2015年に放送され、社会現象にもなった作品です。
原作は池井戸潤さんで、昨年には「陸王」、視聴率40%を超えた「半沢直樹」など、池井戸ドラマはどれも話題になる作品ばかりです。
そして、ついに続編がスタートしました!続編を記念して、「下町ロケット」を振り返りながら、池井戸作品が面白い秘訣や理由を、当サイト独自の視点で紹介してまいります。
下町ロケットを虹見式(ドラマver)で採点すると
虹見式・六性図 | |
---|---|
①キャラクターの魅力 | 15 |
②ストーリー | 14 |
③演技力 | 14 |
④主題歌 / BGM | 13 |
⑤キャスティング | 13 |
⑥感動度 | 24 |
合 計 | 93 |
とにかく皆キャラが立っていて、主人公の佃航平は阿部寛さんが演じられていますが、泥臭く、芯が強く、とても魅力のある人です。
他にも、山崎や殿村、敵方の財前や錚々たる悪役の方々も、物語を面白くする役としてとても素晴らしいです。この作品なら、悪役は楽しいだろうなぁと思えます。
長セリフや顔面アップが多いのも特徴で、俳優界、歌舞伎界、お笑い界を代表する面々の名に恥じない画力もあります。感動度が満点でないのは、続編への期待も込めて、伸びしろを残しておきました(笑)。
多くの魅力に溢れた作品ですが、その魅力や面白さの秘密を、これからたっぷりと述べてまいります。
池井戸作品の特徴
勧善懲悪でわかりやすい構図
基本、主人公側は中小企業といった弱い立場の場合が多く、相手は大手大企業だったりします。「下町ロケット」も、中小企業の「佃製作所」と、大企業の「帝国重工」という対立になります。
そして、何と言っても、主人公側が正義で、敵方は完全なる悪役に徹します。
ここ最近の名作と言われるものは、基本は主人公側が正義には見えますが、敵方にも正義があることが多いものです。実際にはそんな感じだったりすると思いますが、池井戸作品の特徴は、味方は善、敵は悪というようにわかりやすく描かれ、観ている方は主人公側に肩入れしやすく、応援したくなるように描かれます。
「現代の時代劇」と言われることもありますが、その勧善懲悪的なわかりやすさと、主人公側を応援したくなるようなところが、複雑で巧妙に描かれる昨今の流れとは逆を行くストーリーで、「ドクターX」同様、人気を博している要因と言えるかもしれません。
超圧倒的不利からの逆転劇
主人公側は中小企業で、敵方は大企業の為、敵方は資金力や権力にモノを言わせて、ことごとく立ち塞がります。
「下町ロケット」も「陸王」にも共通するものですが、弱い立場にある主人公側ですが、特殊な技術をもっているのが特徴です。
敵方は、大抵その技術を我が物にしようとして、あれこれ策を講じてきます。それに見事に巻き込まれ、何とか持ちこたえたと思えば更なる波に飲まれ、光が差してきたと思ったら、それすら敵方の思惑だったりして、池井戸さんはどんだけドSなんだと思えてしまいます(笑)。
ただ、最終的には、その超圧倒的不利な状況を、オセロの黒が一気に白に変わってしまうように、状況は一変します。
主人公側は奇跡の大勝利を手にし、敵方は奈落の底に突き落とされる。そのカタルシスが、大きな爽快感や感動を生みます。
銀行が大体悪役
池井戸潤さんは、元銀行員で、その経験から銀行内部の事や融資のことなどが詳しく描かれているのですが、大抵の場合、悪役に描かれる事が多いです。
「半沢直樹」なんかは、モロに銀行内部の話で、「部下の手柄は上司の手柄。上司の失敗は部下の責任。」と言われるように、完全なる縦社会で、パワハラなんて可愛いもんです。部下はトカゲの尻尾切りに使われ、日々派閥争いが繰り広げられています。
そして、融資に関しても、舞台が中小企業がメインだからか、どの作品にも共通して、銀行が悪役に描かれることがほとんどです。
まぁ、それも1つの向かい風要素ではあるのですが、あまりに悪役に描くのは、池井戸潤さんが元銀行員だったからだと言えるでしょう。
下町ロケットにおける逆転劇
ナカシマ工業との訴訟
物語第1の難関が、ナカシマ工業との訴訟です。ナカシマは「マネシマ」とも言われ、他社の特許でも、巧妙な策により訴訟問題にして、体力のない中小企業が諦めるのを待って、その特許やマーケットを奪っていくわけです。佃製作所も、ナカシマに特許侵害だと訴訟を起こされ、90億円の損害賠償を請求されます。
初めての経験に戸惑う中、主要取引を一方的に打ち切られ、資金不足にもなり、取引している銀行からも見放され、倒産の可能性まで出てきてしまう。
ナカシマとの裁判は、基本スラップ裁判なので、とにかく引き延ばしされ、解決の芽をみない。佃の顧問弁護士も役に立たず、佃の元嫁が弁護士を紹介しようかと言われるが、プライドが邪魔をして断ってしまう。しかし、裁判がどうにもならず、意を決してもう一度元嫁に電話をすると、「弁護士でしょ?連絡先を送るわ。」と、「みなまで言うな」と言わんばかりの反応は、理想の嫁である。離婚してるけど・・・。
新たな弁護士のおかげで盛り返し、特許の見直しも行われ、裁判の決着にはまだまだ時間がかかる。しかし、資金に余裕のない佃のことを見越し、ナカシマは示談として、株式の51%の譲渡を条件に出してきた。主要取引をうちきられたのも、お金も時間もかかる訴訟を起こしたのも、ナカシマの本当の目的は「佃の技術力」だった。佃製作所の技術力は業界でも有名であり、幾つも特許をとっていた。一連の流れは、その技術をそっくりそのまま手に入れる為の、ナカシマによる「ジョーカーゲーム」だったのだ。
そんな折、純国産ロケットの打ち上げを予定している帝国重工は、一つの壁に直面していた。ロケットの主要パーツである「バルブ」で失敗が連続し、何とか実験を成功させたものの、そのパーツは佃製作所が特許をし直したことで、使えないことが発覚した。そこで、特許を20億で売って欲しいと尋ねてくる。資金不足で訴訟も抱えている佃にとっては渡りに船のような話だが、特許売却ではなく、せめて使用契約にできないかと持ちかけるが、帝国重工の答えは、特許売却のみ。帝国重工も佃の足元を見ていた。
長い訴訟を戦うことはできない佃の取った手は、逆訴訟だった。さらに訴訟を抱えることになるが、佃の弁護士になった神谷の案によって、相手弁護士の論破ではなく、佃航平の裁判官への心からの訴えをすることで、状況は一変し、決着がつく。勝ちに等しい示談によって、佃は56億円を手にすることができた。それにより、帝国重工との関係も、大きく変わるのだった。
帝国重工へのバルブ提供
ナカシマとの訴訟に勝利した佃製作所は、56億円を手にし、当面の資金は確保できた。帝国重工にとっては資金のアドバンテージがなくなり、特許売却の可能性がほぼなくなった。このバルブが使えなければ、そもそものプロジェクトも破綻してしまう為、最低でも使用契約は取らなければならなかった。佃製作所の出した答えは、「部品提供」だった。ロケットは佃の夢でもあり、バルブの特許も、7年前のロケット打ち上げの失敗によって生まれたものだった。
その、失敗を糧にして生まれたバルブは、佃にとっては我が子と同じだった。使い物にならない特許品なんてガラクタだとどんなに揶揄されようが、その価値を知り、我が子同然の特許を売るなんて、もってのほかだった。佃の足元をみて特許売却を迫った帝国だったが、今度は佃も、帝国の事情を逆手に取り、「部品提供」を進言したのだった。最初は渋っていた帝国重工の財前も、佃製作所の技術の高さを目の当たりにし、部品提供の線で話を進めるのだった。
しかし、全ての項目を帝国重工のパーツで進める計画の為、財前個人は、佃の人柄と技術力を認めていたが、会社としてはそうはいかない。そこで、部品提供の下請けに相応しいか、適性試験が行われるが、これが帝国重工が仕掛ける「ジョーカーゲーム」となった。厳しすぎる審査によって、部品提供を諦めさせ、特許売却に持っていこうとするものだった。その為に、親佃派の財前は試験からは外させた。さらに追い討ちをかけたのは、56億円を手にしたとはいえ、経営状況が良くなったわけではなく、社員の不満も買っていた。そんな中で、内にも敵ができてしまう。
横柄な態度で、佃をバカにしたような審査をし、無理難題を吹っかけて失格させようとするが、それが反感する社員の佃魂に火をつけてしまい、意地を見せる。
無理な要求に見事に答え、
「こちらが審査されているだけではなく、そちらも審査されていることをお忘れなく!」
と言う名言が生まれ、文句のない成果と要求に答え、審査は合格にせざるを得なかった。
そこでまた問題が起きる。佃のバルブを使った試験で、バルブの不良が見つかる。それは、佃内部の問題で、反感している社員が不良品を混ぜていたのだ。本人の真野は、責任をとって辞めるが、その時の会話は、たくさんの人の心に響くのではないだろうか。
佃のセリフ
「会社はな、2階建ての家のようなもんだと思うんだよ。一階は、生活をする為に金を稼ぐ為にある。だがそれだけでは窮屈だ。だから夢を見る為の、2階部分が必要なんだ。夢だけじゃ家は潰れちまうが、飯だけ食えても、そんな家は、狭くて退屈だと。仕事には夢が必要なんだ。」
とても納得のいく、佃の言葉です。ある意味、綺麗事とも言えるかもしれませんが、やはりその考え方は経営者として素晴らしいと思いますね。
真野のセリフ
「もう社長の夢物語にはついていけません。私の夢を壊したのは社長じゃないですか!」
これが、真野が不良品を混入させた思いであり、きっと、会社に勤める多くの人が共感するセリフじゃないでしょうか?
会社だけでなく、夫婦や親子、恋人の間でも、似たようなことが多いのではないでしょうか?「自分のことばっかり!」みたいな。
佃の言葉を返すのであれば、1階部分しか担当しない個人でみると、会社の夢を共に見られないのは無理もないかもしれません。少なくとも、真野は1階部分を担当して、そこで見出した夢を蔑ろにされたと感じたのでしょう。こういうジレンマは中小企業であればどのような会社でも起こり得ることだと思います。素晴らしい経営者の佃といっても、必ずしも、佃は誰にでも理想的な経営者ということにはならないのですね。
ロケットの打ち上げ
数々の問題を乗り越え、ついに佃製作所のバルブを使用したロケット実験の日がやってくる。
倒産を覚悟した時から、訴訟に勝ち、下請け審査を乗り越え、社内の問題も抱えながら、全てが報われる時でした。その苦労を見てきた私たちも、同じように喜び、涙をした人もいるのではないでしょうか?そのカタルシスが、下町ロケットの面白いところですね。ちゃんと最後は報われるという。
佃個人の問題としては、思春期の娘とのことも色々あったが、娘にとっても、今後の人生に大きな影響を与えることになる。
サヤマ製作所との争い
今期から始まる第2部は、ガウディ計画という、心臓に埋め込む人工弁開発をメインに進んで行きます。もちろん、ロケットのバルブも同時並行で進んで行きますが、そこで立ちはだかるのはNASA帰りの椎名が率いる「サヤマ製作所」だった。椎名は、とにかく人に取り入るのが上手く、バルブを帝国重工と共同開発に持ち込み、佃のバルブに対抗して、コンペが行われることになった。もちろん、クリーンな関係でないのは明らかだが、コンペの軍配は後々、サヤマに上がってしまう。
それにより、「ロケット品質」と謳っていたが、帝国重工という大きな取引先と他にもいくつかを失うこととなり、再び窮地になってしまう。
そんな時に、人工心臓「コアハート」という弁を作るよう依頼が入る。納得のいく試作品を作ったものの、改良版を作るよう、上から支持される。そこに、介入してきたのが「サヤマ製作所」の椎名だった。佃よりも安く提供し、帝国重工のコンペを勝った技術力をアピールし、ロケットバルブに続き、コアハートの人工弁まで佃から横取りしてしまった。また、佃で人工弁を開発しており、社長と折り合いの悪かった中里をヘットハンティングし、改良データ共々引き抜いてしまう。
帝国重工のコンペもコアハートも、椎名による「ジョーカーゲーム」だったのです。
そこで、佃の元に現れたのが、佃を裏切って退社した真野だった。今は医療施設に勤めており、佃の技術力を頼って、心臓に埋め込む人工弁「ガウディ」制作を依頼に来たのだ。コアハートの弁よりも難易度が高いが、その心意気に打たれ、佃はガウディ計画に乗り出す。
ガウディ計画は、小児外科の教授である一村を中心に、娘を心臓病で失った桜田、新たな環境で夢を見つけた真野によるものだった。その3人の夢に、佃が協力する格好だ。そもそもコアハートも、一村が発案したものだが、一村の上の貴船教授が、自分のプロジェクトとしてしまったのだ。一村と貴船の関係も、社会の縮図を表しているようにも見えます。
ガウディチームは竹内涼真が率いて開発するが、コアハート以上に難しい。そして、この分野の権威である貴船教授の圧力を受け、開発する為の審査も、頭ごなしに却下されてしまう。今田耕司が演じる一村教授も、論文を作るが中々うまくいかず、共同開発している企業も、プロジェクト参加が厳しくなっていた。そして、佃にもあまり余裕はなかった。
そんな中で、事件が起きる。コアハートの被験者が亡くなってしまった。もちろん、病院側はコアハートによるものではなく、患者の急変によるものだと声明を出すが、遺族も佃たちも納得するわけがない。コアハートの人工弁を開発しているサヤマ製作所に移った中里も、疑問を抱いていた。思うように開発が進まず焦っている中、コアハート用に出荷している弁の異常にも気付いていた。患者が亡くなったことで、さらに追い込まれるが、椎名からも、「開発がうまくいかなかったら、どうなるかわかってるよな」と圧力をかけられてしまう。
コアハートの異常に勘付いていた佃は、コアハートの弁の開発も、依頼して来た日本クラウンの態度に不満を抱き、手を引いてしまったが、手を引いていなければ、被験者が亡くなることはなかったかもしれないと、原因究明に乗り出し、サヤマと対決する。
ジャーナリストと帝国重工の財前の協力もあり、サヤマの実験データが偽証だということを暴く。それにより、帝国重工のロケット打ち上げコンペの結果も覆され、佃のバルブが使われることとなった。そして、ガウディの医療審査も、貴船教授と審査員の癒着を暴き、審査に合格することもできた。そして、散々邪魔して来た貴船教授の権威は地に堕ち、椎名は逮捕された。佃のバルブを使ったロケットはまた成功し、ガウディを必要としていた少年の手術も成功したのだった。
佃に対して「ジョーカーゲーム」を仕掛けた側は、漏れ無く痛い目を見るどころか、絶望の淵に叩き落とされた。そして、佃製作所は、ロケット、ガウディと、希望を掴んだのだった。
最大の面白い秘訣はジョーカーゲームの連続
ナカシマのジョーカーゲーム
下町ロケットの面白さは、様々に仕掛けられるジョーカーゲームの連続にあります。単純な敵対という構図ではなく、弱者対強者という構図で、さらにはジョーカーゲームを仕掛けられる立場で、圧倒的窮地に晒されます。
ナカシマ工業は、「佃の技術力」を手に入れる為に、佃の取引先に手を回し、取引を解消させ、経済的兵糧攻めを行った。その状態で更に追い込む為に訴訟を行った。あくまで目的は「佃の技術力」であり、訴訟に勝つことではなかったのです。イレギュラーである神谷弁護士の協力もあり、途中で相手の思惑に気付き、逆転の一手を打ったことで、大逆転劇を生みました。神谷弁護士がいなければ、おそらく佃派負けていたでしょう。
ナカシマが仕掛けたジョーカーゲームの真意に気付かなければ、例え気付いても、対抗しうる力や策がなければ、どうすることもできません。それが、「ジョーカーゲーム」の恐ろしさです。
帝国重工のジョーカーゲーム
帝国重工は、前述しましたが、バルブを部品提供ではなく、せめて特許の独占使用に持って行く為に、嫌がらせに近い下請け審査を行いました。更に、佃が以前勤めていて、ロケット研究をしていたJAXAにいる知り合いに頼み、佃を引き戻すように手を打っていた。しかし佃は、会社の仲間の努力や心意気を実感し、経営者としての自覚を強めて行ったことで、JAXA行きを断るのだった。奇しくも、会社を辞めた真野に「簡単に夢を見つけられると思うな!」と言ったように、自分自身、佃製作所で本当の夢を見つけた瞬間なのかもしれません。
椎名のジョーカーゲーム
椎名は父から「やるからには一番を目指せ!」と常々言われていた。そんな父が経営不信に陥り、会社や社員の為に無給で働き亡くなったことが、憐れだと感じ、肩身も狭くなり、NASAに渡った後帰国すると、手の平返しの反応だった。それから仕掛けた「ジョーカーゲーム」は、ある種、技術というものへの復讐だったのかもしれない。
ナカシマや帝国重工のような明確な理由はわかりませんが、とにかく佃製作所の不利になるような策を打ち続け、その策に溺れ、中身のない「ジョーカーゲーム」によって、その末路は無残なものでした。
ジョーカーゲームの逆転こそが最大の魅力
下町ロケットの魅力は、大企業に仕組まれた「ジョーカーゲーム」を、中小企業の「佃製作所」が覆して逆転するという所が、最大の魅力だと言えます。圧倒的不利な状況に追い込まれ、強者によるジョーカーゲームを覆すことは、簡単なものではありません。対等な戦いではなく、普通なら勝つことは不可能でしょう。なぜなら、大企業側は、当然勝てると踏んで仕掛けるからです。そんな状況を一度ならず、二度三度ひっくり返してしまう所が、面白い要因な訳ですが、ただの逆転劇なのではなく、「ジョーカーゲーム」を逆転する、打ち破るという所こそが、最大の魅力なのです。
ある意味、不可能を可能にしたわけで、強者による支配からの解放を象徴していて、恐らく誰しもが無意識下に感じている感覚(サイレントマジョリティー)が、反応しているのではないかと思います。
ジョーカーゲームに勝つには?
圧倒的な技術力
矛盾するかもしれませんが、佃製作所は、高い技術があったが故に狙われたのですが、その圧倒的な真似できない程の技術によって、状況を打破したとも言えます。
その技術が生んだ特許が、帝国重工さえも超え、切り札となりました。それによって、足元を見られながらも、ただ一点においては同等以上の交渉道具になったわけです。
何かを為すのに、今から始めるのではなく、既に生み出したものが、何かのきっかけで大きな価値を生むこともあります。
圧倒的な技術は、諸刃の剣とも言えるかもしれませんが、ジョーカーゲームを打ち破ることもできることも忘れてはならないですね。
圧倒的な努力
「ジョーカーゲーム」を仕掛ける側は、確実に優位な立場にいます。人脈、権力、資金力、知識力など、おそらく真正面からでは太刀打ちできないでしょう。
だからこそ、圧倒的な努力と工夫によって、まるで、メラメラと赤く燃える炎を限りなく一点に集約していくと、次第に青白く光る炎となり、もっと精鋭化させると、最後には無色透明な炎の刃となって、包囲する鉄の網を貫くほどのエネルギーを生み出すように。その一点は伝家の宝刀となり、会社の窮地を救いました。
帝国重工からの下請け審査の無理難題を突きつけられた時でも、社を挙げて、最大限以上の力を発揮したことで、相手を黙らさせることができました。
常にMAXの状態を維持することはできないでしょうが、ここぞという時には、圧倒的な努力と工夫が必要になるでしょう。
相手の真意を見抜く智慧
ジョーカーゲームは非常に巧妙で、意図を見抜かれないようにしています。言ってみれば、マジシャンが用いる技術にも通じます。マジックの瞬間、視線を別に向かせたり、言葉によって意識を拡散させたりして、一番重要なところは見えないように仕向けます。
ジョーカーゲームもまさに同じで、もっと規模が大きなものがあります。
ナカシマの例で言うと、目的は佃製作所の買収ですが、その為に打った手は、
・主要取引先との取引を切らせる。
・「マネシマ」と揶揄される、権利訴訟の強みを生かして、特許侵害の訴訟を行う。
・佃の体力を削る為に、訴訟を長引かせる。
・絶体絶命の時に、恩情のような示談交渉をして飛びつかせる。
というものでした。その結果、同様の手口で倒産に追い込まれた企業もあり、佃もその一途を辿りかけたのですが、神谷弁護士が相手の真意を見抜き、一か八かの賭けに出たことで、勝利に繋がった訳です。ただ、真意を見抜くタイミングがもう少し遅かったら、それはそれで手遅れだったかもしれもせん。そして、渦中にいると、特に相手の真意は見抜けないのかもしれませんね。
諦めない信念
佃製作所は、度々窮地に追いやられます。それはもう、「ドMか!!」と言いたくなるほどです(笑)
ナカシマとの訴訟、帝国重工との下請け交渉、コアハートの人工弁、ガウディ計画の人工弁と医療審査。
その度に佃は何度も諦めかけるのですが、家族、社員、同志のおかげで、信念を曲げずにいられたのです。
佃航平自身の信念の強さももちろんですが、決して佃一人だけの力ではないのも事実です。本当に信頼できる仲間の存在も、信念を諦めさせない大事な存在と言えますね。
己のプライド
佃航平を動かすのは、技術者としてのプライドでもあります。法廷で語った「技術は嘘を付かない」という言葉であったり、サヤマ製作所の椎名と一騎打ちで話した言葉は、まさに佃のプライドそのものです。椎名にもプライドはあったのでしょうが、佃のプライド(誇り)が勝っていたのでしょう。
最後は必ず勝つという安心感!
そして、なんだかんだ言って、最終的には勝つんでしょ?という安心感もあります。
ある意味、ジェットコースターのようなドラマかもしれないですね。しっかりとセーフティーバーに守られて、カタカタカタカタとゆっくり登り、急降下し、回転し、ドキドキハラハラです。でも、死ぬことはありませんよね?安全が保証されたスリルを味わえる訳です。
まさに池井戸ドラマは、ジェットコースターのように、最終的には勝ちが確定していて、絶体絶命の窮地から大逆転していくストーリーは、安全に楽しめるスリリングで胸が熱くなるドラマと言えますね。
実は、これぞ池井戸流ジョーカーゲーム
この、ジョットコースターのように、安心してスリルを楽しめて、途中どんなにヤバイ状況になっても、最終的な勝ちが確定しているストーリー構成は、ある種のジョーカーゲームとも言えます。
つまり、ある意味において「予定調和」ではありますが、ゴールに到るまで、どのような道を辿っていくのか、それこそが、一番の見所と言えます。最終的には勝つ結末になる訳ですが、それまでに幾度となく訪れる窮地や、際立つ敵役の暗躍などによって、溜まりに溜まった鬱憤を、最後の最後で一気に晴らしていく訳です。それがなければ、最終的に勝ったとしても、ここまでの感動はないんです。それは、観ている私たちも、演じている役者さんたちも、きっと佃さんたちも。
「下町ロケット」は、一つの終わりを迎えましたが、また新たに物語が動き出しました。「最終的に勝ち」というのも、どこをゴールにするかは人それぞれです。そこをゴールにすれば終わりだし、通過点にすれば、まだまだ色んな物語が生まれるでしょう。
それは、私たちの人生だってそうです。
生まれてから幼稚園や保育園に通うことで、初めて相対する存在が現れます。小学校に上がっては、部活やテストなどがあり、競争が生まれます。また、いじめなども起きてきたりもします。中学生や高校生になれば、更に競争が激しくなり、恋愛をしたり、受験もあります。思春期では、親との葛藤もあるでしょう。兄弟で比べられたり、挫折を味わい夢を諦めることもあるでしょう。就職活動では社会の厳しさを味わったり、就職したはいいものの、社会の理不尽さや仕事の厳しさに打ちひしがれることもあるかもしれません。お金で苦労し、信頼している人に裏切られ、死にたくなることもあるかもしれません。
人は生まれたら必ず死にます。ある意味、「死=ゴール」とも言えるでしょう。人生、辛いことは沢山あって、諦めたくなる時も沢山あると思います。時には、諦めたっていいと思います。そこがゴールでないのなら、逃げるは恥だが役に立つものです。あれ、聞いたことある言葉が出てきました(笑)。
要は、「自分で勝手にゴールを決めるな」ということです。必ずゴールはくるので、勝利が確定したゴールを設定してしまって、それまでの道中は、思いっきり生きることです。いま目の前にあるものと本気で向き合い、壁に思いっきりぶつかり、乗り越えて行くことです。そこには、きっとあなた自身の「下町ロケット」が飛んで行くはずです。
そんな、ゴールに到る道中こそ、感動が生まれる、ということを教えてくれるのが、「池井戸流ジョーカーゲーム」なのかもしれません。
下町ロケットのまとめ
なんだか、最終的に説教っぽくなってしまいました…(–; 歳ですかねぇ(^^;
そんなつもりはないんですが、「下町ロケット」の続編の前にもう一度振り返ったら、その時には気付かなかった発見が沢山あったので、ドラマでしたがコラムにしちゃいました。
ここだけの話、コラムを書いている今日、「下町ロケット〜ゴースト〜」の第1話があり、早速観ちゃいましたが、前シリーズで背景が出来上がっているため、感動の連続でした。今回も、期待以上の感動と発見を与えてくれそうです!
もし、前シリーズを観ていない方は、ぜひ前シリーズを観てから、続編に臨んでいただければと思います。そして、「下町ロケット」を観ようか迷っている方、もう私に言えることはありません。このコラムで十分に伝えました(笑)。
人それぞれ好みがあるので、無理強いするつもりは一切ありません。
もし、このコラムをご覧になって、「下町ロケット」を観ようと思った方。観た方は、コメントお待ちしてまーす!^_^
カタストロフィ…カタルシスでは?
まんさん、コメントありがとうございます!
管理人のMAXです。
ご指摘ありがとうございます!その通りですね(^^;破滅させてました(笑)
ご指摘してもらえるほど読んで頂いて、ありがとうございます!
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